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<難航 核のごみ>国民合意へ論議必要

日本学術会議が核のごみ最終処分の問題点を論じたフォーラム。討論型世論調査を通じた政策決定への市民参加を求める意見も出た=10月、東京

◎最終処分政策を検証(下)対話

<討議前後調査>
 科学者団体の日本学術会議は今月2日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分をめぐる民意について、新たな調査結果をまとめた。インターネットの会議システムを活用して全国の約100人を対象に実施した実験的な討論型世論調査の報告書だ。
 「核のごみの最終処分問題は、市民が現実的感覚で判断できる領域を超える。熟慮された社会的判断を構築し、科学技術をコントロールするために有効な調査となる」。主導した東京工業大大学院の坂野達郎教授は狙いをこう説明する。
 3月1日の調査には事前のネット募集に応じた20〜60代が参加。6〜8人のグループに分かれ、テレビ会議形式で70分ずつ2回にわたって討議した。参加者には(1)討議前(2)討議直前(最終処分に関する資料を読んだ後)(3)討議後−の3段階で同じ設問のアンケートを実施した。

<理解へ手応え>
 討議には、多様な意見を交わしながら参加者が考えを明確にする目的がある。考えをさらに深めてもらおうと、1回目の討議後に専門家7人とネット上で質疑応答する機会も設けた。
 その結果、学術会議が提案する「核のごみを暫定保管し、国民的議論をする」案に対する賛成割合はグラフのように討議後には10ポイント以上増えた。
 政府が目指す地層処分案も同様に3割台から4割台に増加。核のごみ受け入れ可能総量をあらかじめ決め、原発依存の低減につなげる「総量管理」を伴う暫定保管案は、討議前から80%超と最多の支持を集めたが、こちらも討議後は3ポイントほど増えた。
 ネット上での討議の質などを検証する必要はあるが、丁寧な対話が最終処分への理解を深めることが一定程度実証された。調査に携わった今田高俊東工大名誉教授は「各地で開催したり回数を重ねたりすることで、国民が納得できる解決策を探れるはずだ」と語る。

<一方通行形式>
 核のごみを地下300メートルより深い場所で地層処分する政策が固まった2000年以降、国や事業主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は国民の理解を得ようと、シンポジウムなどを各地で開催してきた。ただ、内容は政策を説明し、限られた参加者から質問を受け付ける形式が多く、「一方通行」の感は否めない。
 「本来は『地層処分を現世代で行う』という政策の根本について、社会的合意をあらためて得る作業が必要。国は(その作業が)『走りながらできる』という判断になっている」。最終処分に関する国の有識者会合の委員も務める寿楽浩太東京電機大助教は指摘する。
 最終処分は安全確保が必要な期間が数万年に及ぶ。それ以前に処分地の選定や調査に20年以上、建設・操業から閉鎖まで50年以上が見込まれる。広い支持に基づく政策の安定性がなければ実現は困難だ。
 寿楽氏は「根本の合意が不十分だと、『なぜ地層処分なのか』といった疑問の声が止まらず、仮に候補地が選定されても『ちゃぶ台返し』が起こりうる。根本の議論を丁寧に、時間と手間を惜しまず進めるべきだ」と主張する。

[討論型世論調査]無作為で選ばれた参加者同士の討議を経て、討議前後の意見の変化をアンケートで比較する世論調査。通常の世論調査よりも熟慮された民意を明らかにし、政策に反映させる狙いがある。民主党政権下の2012年には、将来の原発の在り方などエネルギー政策の策定時に実施された。


2015年12月11日金曜日


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