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タラ、サバ、ヒラメ…生け締め 浜再生に一役

佐井村漁協が取り組む神経締め。手間は多いが、魚を高値で売れる

 東北の漁業者の間で、生きた魚を血抜きして出荷する「生け締め」が増えている。鮮度や味の良さが飲食店などに評価され、青森から沖縄に空輸するケースも。付加価値が生まれ、浜の活性化に貢献している。(八戸支局・岩崎泰之)

<日持ちに効果>
 「日持ちがして身質がよい。価格を上げる工夫が大事だ」。青森県八戸市で11月24日にあった「八戸前沖産船上活〆(かつじめ)真ダラ」の発表会で、地元漁業者団体の幹部は、新ブランドへの期待を語った。
 船上で4、5キロサイズだけを血抜きし、臭みを取り除く。身に弾力があり品質が向上する。仲買や料理店の関心は高く、通常3000〜4000円の雄1匹が7000円前後と約2倍の高値で取引されている。
 八戸では11月、船上で血抜きしたサバを急速冷凍し刺し身にする試みも始まった。漁業者が1匹ずつ締めるのは手間だが、1匹数百円のサバが2000円以上の高級魚に化ける。生け締めはちょっとしたブームだ。

<沖縄にも空輸>
 下北半島の西に位置する佐井村漁協(青森県佐井村)は血抜きに加え、神経組織を取り除く「神経締め」という生け締めの技術を駆使する。ヒラメ1匹の処理に約20分かかるが、死後硬直を遅らせ、鮮度を長く保てる。
 漁協の福田忍業務課長は「1週間後でも刺し身で食べられ、はやりの熟成にも向く。今は飲食店が言い値で買ってくれる」と話す。
 2年前に始めた取り組みは、関東方面の飲食店と直接取引して成功した。現在は24店舗に出荷し、取引先の関連で沖縄にも送る。漁協の年間売り上げは数百万円増えた。グアムに空輸する話も来ているという。
 昨年6月には北海道や岩手の関係者を交えた「北日本神経〆(しめ)師会」が発足した。福田課長は「下北で一番へんぴな所でも、高い技術を持った人が作業することでブランド化できた。生け締め、神経締めはますます広まる」とみる。

<関心示す福島>
 山形では庄内浜のグループが船上で神経締めしたサワラを東京・築地市場に出し「庄内おばこサワラ」としてブランド化に成功した。岩手では久慈市漁協がイカの神経締めに着手。秋田ではタイやヒラメに生け締めを導入する動きがあり、原発事故の影響で本格操業を自粛する福島でも「一部の漁業者が勉強を重ねている」(県水産課)。
 宮城では本年度、養殖ギンザケの約3割が生け締めで出荷された。チリなど輸入物は同様の処理をしているといい、宮城県漁協の担当者は「輸入物に負けられない。生け締めの割合を増やしていく」と意気込む。
 魚価の低迷や漁獲量の減少など、どこの地域も現状に強い危機感がある。水産庁も浜再生を掲げて地域の取り組みを支援する。
 全国漁業協同組合連合会の高浜彰・浜再生推進部長は「産地間競争の中、生け締めは遠隔地が品質の差をなくすのに有効。地元で消費できない分を東京に出すなどして所得増につなげられる。消費者は付加価値のある、おいしい魚を求めている」と分析する。

[生け締め]生きた魚の背骨を断ち切って血を抜き、鮮度を保つ技術。神経締めは以前から知られていたが、ここ5年ほどで各地の浜に広まった。いけすで疲労物質を除去した魚を使い、血抜き後に背骨にワイヤを入れて神経を抜く。魚種や地域によってやり方は異なるが、魚のうま味を引き出せると飲食店業界などで注目されている。


関連ページ: 広域 経済

2015年12月15日火曜日

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