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<大槌旧庁舎>解体か保存かの議論 再び続く

年度内の解体がなくなった岩手県大槌町の旧役場庁舎

 東日本大震災の津波で当時の町長と職員計40人が犠牲となった岩手県大槌町の旧役場庁舎をめぐり、平野公三町長は15日、示していた年度内解体の断念を表明した。町長は解体方針そのものは変えておらず、解体か保存かの議論が再び続くことになる。前町長が一部保存を決断して2年9カ月。意見が割れる町議会や町民には、歓迎と戸惑いが入り交じる。
 解体に伴う予算案提出の先送りを求める要請書を出した町議会。1年程度の時間をかけ、被災者以外も含む町民らの意見を聞き、震災遺構としての価値などを議論する方針だ。
 小松則明議長は「今は問題が過熱しすぎている。最後は各議員の判断が問われるが、冷静に考えたい。時間の経過とともに町民の心も変わる」と語った。
 町が11月に計9回開いた意見交換会などでは約70人が意見を述べた。保存を訴える東梅守議員は「ようやく町民が声を出せるようになった状況を大事にしたい。今後の議論では議会として問題と向き合い、動く必要がある」と活動を本格化させる意向だ。
 解体を主張する及川伸議員は「要請書に同意したのは議会の混乱を避けるためで本意ではない。予算案には会派で賛成するつもりだった」と語る。早期の予算案提出を町長に働き掛ける考えを示した。
 意見交換会に参加した町民にも思いが交錯した。
 関連死を含む町民犠牲者1285人全員の人柄などを記録する「生きた証(あかし)プロジェクト」実行委員長の高橋英悟さん(43)は保存を望みつつ「論点が解体か保存かに単純化されたのは残念だった。防災など将来のまちづくりまで視野を広げた議論を再スタートしなければいけない」と指摘した。
 町職員OBで旧庁舎を見るのがつらいとして解体を願う野沢文雄さん(71)は「町長が予算案を出すと信じていただけに驚いた。壊してほしいという気持ちに変わりはない」と話した。


2015年12月16日水曜日

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