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<話そう原発>「なぜ」生徒ら問う

ジュネーブでの発表の原案作りを進める高校生ら=9月27日、郡山市

 原発事故の発生から4年9カ月。東北は、廃炉や再稼働といった原発をめぐる問題を話し合っていくことを避けては通れない。国会事故調の報告書と向き合い「なぜ」を考え始めた若者たちの活動を紹介する。(原子力問題取材班)

◎国会事故調報告書を読んで(上)

 スイス・ジュネーブに世界各国から集まった約130人を前に、日本の若者3人が仲間たちを代表して訴えた。
 「事故は防ぐことができた」。東京電力福島第1原発事故について、考え、話し合い、たどり着いた結論の一つだった。
 今月4日にあった国際赤十字・赤新月社連盟総会の関連行事。福島県郡山市の安積高2年の今園柊香さん(17)と関東の高校生、大学生の3人がチームで参加した。
 タイトルは「What Shall We Change?」(何を変えるべきか)。世界に伝えるべき原発事故の教訓を英語で発表した。
 3人は国会事故調査委員会の報告書を基に事故の背景を討論する「わかりやすいプロジェクト」のメンバーだ。

<途中諦めも>
 プロジェクトは2012年9月、事故調で調査統括を務めた経営コンサルタント石橋哲さん(51)=川崎市=らが始めた。福島や東京の高校生らが毎年、各地で議論を重ねている。
 例えば9月18日には福島市の福島高で、1、2年生13人が報告書を読み込んだ。「第5部 事故当事者の組織的問題」に関して疑問や意見を出し合った。
 旧原子力安全・保安院は津波の危険性を認識していたが、電力業界の抵抗を抑えきれず、指導や監督を怠った。報告書は「行政の不作為」と断じた。
 「なぜ誰もおかしいと言い出せなかったのか」「なぜ人の命より組織を守ることを優先するのか」。生徒からは当然のように疑問が湧き上がった。
 議論を進めると「仕事を辞める度胸がないと不正を指摘できない」「無関心の方が得だ」「大人の社会はおかしい」。ついには「国は頼りにならない」「大人になりたくない」と諦めの言葉も出始めた。
 「国や政府は誰の意思で動いているのかな」。石橋さんの一言が議論の流れと雰囲気を変える。

<教訓世界へ>
 再び考える生徒たち。「私たち?」「人災の責任は自分たちにもあるってこと?」。自らに問い掛けるような声が複数上がった。
 組織の利益や上下関係、周囲の雰囲気、多数意見に流される。そうした習慣が事故を防ぐ芽を摘んでしまった。生徒たちが導き出した結論だ。
 同じような環境は学校や日常生活にもある。少数意見に耳を傾け、本音で対話を重ねることが、原発事故のような悲劇を繰り返さないことにつながる。
 各地の若者たちが討論を経てまとめた教訓を、今園さんら3人はジュネーブで発表した。
 締めくくりに選んだのは赤十字のスローガン。「私たちの世界をよくするのは、あなたたち一人一人の行動です」。原発事故を「わがこと」と捉え、考え、話し合う大切さを世界に発信した。

[国会事故調査委員会]立法府が行政府を監視する目的で、国会が憲政史上初めて設置した第三者による独立調査機関。2011年12月に委員10人で発足。事務局も含め行政府の官僚はゼロ。6カ月間で2000点以上の資料、1000人以上の関係者を調べ、1万人以上の被災者や約2400人の原発作業員にアンケートを実施。12年7月、事故を「人災」とする報告書をまとめた。


2015年12月18日金曜日

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