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<話そう原発>自主性を引き出す

原発事故を基に考え、話し合う大切さを高校生らに投げ掛ける石橋さん(左)=9月18日、福島市の福島高

◎国会事故調報告書を読んで(下)

 「きょうは皆さんに国会事故調査委員会の委員になってもらいます」。経営コンサルタントの石橋哲さん(51)=川崎市=が呼び掛けた。
 東京電力福島第1原発事故を検証した国会事故調の報告書を基に事故の背景を考える「わかりやすいプロジェクト」。郡山市のイベントスペースであった9月27日の「郡山編」には、地元の安積高をはじめ福島県内の高校生や地域住民ら14人が参加した。
 石橋さんは国会事故調の事務局を担った。事故調が2012年3月に実施した参考人聴取のビデオを見て、国民、世界の人、未来の人の立場からどう映るのか。客観的な事実から考えるのがこの日の狙いだった。

<国民の財産>
 国会事故調は12年7月、報告書を衆参両院議長に提出した。その2カ月後の9月、石橋さんら有志が始めたのが「わかりやすいプロジェクト」だ。
 「報告書は国民全体の財産だ。それがなかったものにされる」という危機感があった。
 報告書は規制当局を監視する常設委員会の国会設置など幾つもの貴重な提言を残した。だが、国会は提言を実現させる計画書すら作ろうとしなかった。報告書の提出当時、政府は既に「収束宣言」を出していた。
 「原発事故はなぜ起き、どうすれば防げたか。これから何をするべきか。一人一人の問題として考えるきっかけをつくりたかった」。石橋さんはプロジェクトに託した思いを力説する。
 福島高(福島市)や灘高(神戸市)といった高校や大学、社会人を対象にワークショップや講義を続けてきた。活動は「手弁当」が基本。「お金に色はないが、においはある」と、政治色のある団体などからの寄付は受けない方針を貫く。
 企画も工夫。東京電力役員や規制当局、被災者らの立場になって考える「なりきりディスカッション」や報告書の輪読会などを実施してきた。

<まず考える>
 郡山編で国会事故調委員になった生徒たちが見たのは、質問に誠実に答えない規制当局の元トップの姿。組織防衛に固執しているようにしか映らなかった。
 「どうしてこうなったのか」「なぜ保身に走るのか」と生徒たち。「集団に属している安心感が根底にありそう」「自分たちにもあるよね」
 「委員長コメント作成」という当初目標に至らなかったものの、石橋さんは無理に軌道修正することはなかった。自主性を引き出すことの方こそ大切だからだ。
 原発事故という未曽有の「人災」から社会は教訓を得たと言えない。東芝の不正会計、くい打ちデータ改ざん、血液製剤の不正製造…。いずれも組織の腐敗が問題の根底に巣くう。
 「自分の頭で考えることが出発点であり、この国が生き延びるために不可欠な『イノベーション』(新機軸)への第一歩につながる」と石橋さん。原発事故を基に考え、話し合う意味はそこにあると信じている。


2015年12月19日土曜日

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