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<高台移転>財源不足…跡地利用進まず

移転跡地に多目的広場の整備計画がある大船渡市越喜来地区。財源不足が壁となり、実現は不透明だ

 東日本大震災で被災した岩手県の沿岸部の市町村で、宅地などが高台に集団移転した跡地の活用が進んでいない。利用計画を策定しても事業費の財源確保は難関だ。跡地内には民有地と公有地が点在し、集約が思うように進まない。放置が続けば、更地だけが残ることになる。自治体は、復興交付金の柔軟な運用や税制の特例措置を求める。(山形聡子)

<交付金の対象外>
 大船渡市の越喜来地区。津波で被災し、市は高台に移転した越喜来小と宅地の跡地を多目的広場とする方針で住民が合意した。分散した住民が集う場所にする計画だが、具体化していない。大きな壁は財源不足だ。
 市は整備費用として国に復興交付金を申請したが、規模の大きさや周辺の高台に既存のグラウンドがあることを理由に対象外となった。
 市被災跡地利用推進室の担当者は「このままでは、ただの更地になる恐れがある。民間資金の活用や規模の再検討などで工夫したい」と対応に苦慮する。
 防災集団移転促進事業を実施した7市町村に県が調査したところ、移転した72地区のうち、土地利用計画を決めたのは20地区(28%)にとどまる。策定中は37地区(51%)、未検討は8地区(11%)、事業の実施予定なしが7地区(10%)だった。
 大船渡市は26地区のうち12地区で土地利用計画を作る方針。これまでに策定されたのは、5地区だけとなっている。

<公地と民地混在>
 跡地の一体的整備が難しいことも計画が進まない要因だ。市町村が買い取った土地と取得対象にならない民有地が混在し、権利が複雑化している。
 国は取得した土地と民有地の交換で集約を図る方針。交換先となる土地は住宅などがあった跡地で、建物の基礎部分が残っていたり、道路との段差があったりする。地権者が新たに活用する場合、撤去費や整備の費用が自己負担となる公算が大きい。
 民有地の地権者には負担感が生じ「交換するメリットが見いだせない」(市被災跡地利用推進室)。交換した場合、課税対象となることも足かせになっている。
 計画が決まっても事業が進まないことで、ほかの地区の計画策定に影響が出始めている。市は「財政支援がどこまで得られるか国の動向を見極める必要がある」とし、策定への協議は足踏みが続く。
 県は12月初め、交換対象となる民有地の地権者への課税免除や、復興交付金の柔軟運用を国に要請した。県まちづくり再生課は「現場の状況に応じた柔軟な制度設計を求めたい」と対応を急ぐ。

[メ モ]防災集団移転促進事業で移転すると、宅地や隣接農地は市町村が買い取り公有地となる。店舗や工場跡地は買い取り対象外で民有地のままとなる。市町村は跡地の利用計画を策定する区域の民有地と区域外にある公有地を交換。区域内で公有地を増やして集約を図る方針。交換する際には、民有地の地権者に土地価格の3%相当の不動産取得税が課される。


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2015年12月21日月曜日

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