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<TPP>攻め/見えぬ輸出支援策

下渡敏治氏(しもわたり・としはる)日大卒。日大助教授を経て2000年から現職。専門は国際フードシステム論。67歳。鹿児島県出身。

 政府は18日、環太平洋連携協定(TPP)対策として3000億円を超える農林水産関連の補正予算案を閣議決定した。国の対策は大筋合意から2カ月でまとめられた。東北の農水産業関係者は海外をどう攻め、産地をどう守るべきか。「攻め」と「守り」の政策の課題を専門家に聞いた。(聞き手は東京支社・門田一徳)

◎日大生物資源科学部教授 下渡敏治氏

 −TPPに関する政府の政策大綱と補正予算案に対する評価は。
 「農地の大区画化など体質強化策は示されたが、輸出支援策もセットで示すべきだった。ほとんどの生産者や農業団体は貿易制度、検疫、流通ルートなどに詳しくない。コメ、青果物、牛肉といった生鮮食品を重点品目にしているが支援策が見えてこない」

 −国の支援体制の課題をどうみる。
 「海外の販路拡大や市場調査、ブランド構築など支援メニューは豊富だが、ほとんどが補助率5割で規模の小さい生産者や団体にとって使い勝手が良くない。申請数はいや応なく増えるので、自治体や農業団体は職員の書類作成スキルを上げなければならない」

 −生産者、団体に求められる戦略は。
 「相手国の消費者の好みを調べ、輸出可能な量を把握する必要がある。切れ目のない安定供給ができないと信頼は得られない。スポット的な輸出は市場、収益の確保に結び付きにくい」

 −東北ではどんな品目に注目しているか。
 「実績のある青森のリンゴや三陸の海産物のほか、日本酒の潜在力に期待している。南部美人(二戸市)、一ノ蔵(大崎市)、大和川(喜多方市)など先行例はあるが、まだまだ伸ばす余地がある。ニュージーランドは2000年代にワイン産業を急発展させ、今では年間輸出額1260億円に拡大した。日本酒は100億円を超えた程度で売り方次第で十分成長できる」

 −政府はコメも輸出重点品目に掲げている。
 「世界的にコメの消費は増えているが、それぞれの国の食文化があり、日本のコメが数十万トン規模で売れる保証はない。すしや和食に特化した売り込み、電子レンジで温めるだけのパックご飯など他国と差別化を図るべきだ」

 −東日本大震災被災地の農水産物を一部の国・地域が過度に規制している。
 「まず政府一体となり粘り強く規制解除を働き掛ける必要がある。TPP交渉参加国で実績をつくれば、他国・地域の規制解除にプラスに働く可能性もある」


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2015年12月21日月曜日

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