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<TPP>守り/価格下落 対策必要

鈴木宣弘氏(すずき・のぶひろ)東大卒。農水省、九州大大学院教授などを経て2006年から現職。専門は農業経済学。57歳。三重県出身。

 政府は18日、環太平洋連携協定(TPP)対策として3000億円を超える農林水産関連の補正予算案を閣議決定した。国の対策は大筋合意から2カ月でまとめられた。東北の農水産業関係者は海外をどう攻め、産地をどう守るべきか。「攻め」と「守り」の政策の課題を専門家に聞いた。(聞き手は東京支社・門田一徳)

◎東大大学院教授 鈴木宣弘氏

 −政府のTPP関連対策をどう見る。
 「土地改良や施設整備の補助金ばかりで生産者の直接的なセーフティーネットになっていない。ある程度の規模拡大や効率化は必要だが、面積規模が全く違う米国やオーストラリアとは勝負にならない。逆に生産者の過剰投資を誘発する事態になりかねない」

 −東北でTPPの影響が懸念される産業は。
 「仙台牛、前沢牛、米沢牛というブランド牛でも中小規模ではやっていけなくなる。私の試算では赤字補填(ほてん)が適用されても200頭以上でないと黒字化が難しい。養豚も2000頭が採算ラインになる。赤字補填を法制化するのは良いが財源がはっきりしない。結局、他の農水省の事業予算を削って回すことになるのではないか」

 −コメの関税は維持されたが、米国産などの輸入枠が新たに設けられた。
 「政府は備蓄米の買い入れ量を増やして対応すると説明するが、市場はコメの在庫増加分を織り込むので米価には影響する」

 −TPPの影響を抑えるためにできる対策は。
 「東日本大震災後に被災地の農水産品を買って支援してきたように、消費者の意識が重要になる。日本は他国よりも小売りの力が強いが、地元食材を買い支えていこうという方向に消費者の意識が変われば小売業者も変わる。生産者は今後、じわじわ価格が下落したときに備えるセーフティーネットの仕組みを、政府に求めていくべきだ」

 −対策では国産食材の消費支援で、原料原産地表示の拡大検討も掲げた。
 「そもそもTPPは原産地表示の抑制を志向しており、他国に不当な差別と捉えられかねない。むしろ減農薬や環境保全など科学的な根拠に基づく高付加価値化を進めた方が良い」

 −参考になる他国の保護政策は。
 「米国は1973年から生産者が再生産可能な所得の不足払いを行っており、小麦、大豆、コメだけで1兆円拠出した年もある。日本も設備投資補助や土地改良の予算を生産者の所得対策に組み替えれば可能だ」


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2015年12月21日月曜日


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