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<回顧みやぎ>蔵王山 安全性と魅力向上期待

蔵王エコーラインを通行できる最終日に見せたお釜の穏やかな姿。今季は団体客の大型バスの姿がめっきり減ったという=11月4日

◎(4)初の火口周辺警報

<そのとき>
 宮城、山形両県にまたがる蔵王山(蔵王連峰)の火口湖「お釜」を目指し、山麓から駆け上がる自転車レース「日本の蔵王ヒルクライム」。お釜の白濁、火山性微動といった火山活動の高まりから、主催の宮城県蔵王町などが5月の大会の休止を決めた記事を書いたのはことし1月だった。
 気象庁は蔵王山の警戒水準を最も低い「噴火予報」に据え置いたが、「水蒸気噴火は予測困難で、競技者や運営スタッフの安全確保が最優先」と判断した。昨年9月の御嶽山噴火もあり、観光を掲げる町の安全重視の素早い対応に正直、「やるじゃん」と思った。
 そして4月13日。蔵王山に初の「火口周辺警報」が発令された。5月の大会の休止は正解だった。
 ただ、観光面に神経を使う一方、町民への周知と対策は遅れ、「何だかなあ」と首をかしげざるを得なかった。最大の懸念は、冬に噴火した際に発生する融雪型火山泥流。噴火の熱が雪を大量に溶かし、土砂や岩石を巻き込んで、川沿いや谷筋を高速で流れ落ちる。
 東日本大震災の津波に匹敵する危機感を持ち、避難計画を迅速に策定すべきだと3月にコラムで訴えたが、町はのれんに腕押し。県庁や警察からも「蔵王町は随分とのんびりだね」とあきれるような声が聞こえてきた。
 幸い、警報は約2カ月後の6月16日に解除され、比較的静穏な状況にある。

<それから>
 町は今月上旬、融雪型火山泥流に備えた避難計画の住民説明会を終えた。被害が最大規模の場合、避難対象は町民の2割に当たる約2800人に上る。
 住民の命も、観光客の命も守る具体策を常に磨き上げる姿勢が不可欠だ。結果オーライは許されない。
 警報発令後、山麓の温泉地で客足が遠のいた。お釜から約5キロ、一軒宿の秘湯で知られる川崎町の峩々温泉も苦境にもがく。
 「宿の灯を消すわけにはいかない」と6代目館主の竹内宏之さん(40)。「火山活動の恵みとして温泉がある。湧き出る限り続ける」。前向きできっぱりとした口調に気概を見た。
 観光を楽しむには感覚的な要素を多分に含む。それでも、火口周辺警報が解除された今、旅先として蔵王をはなから除外するのは非科学的と感じる。
 ピンチをチャンスに変えるべく、観光地の安全性と魅力を高める取り組みもあちこちで始まった。正確な報道に努めながら、自ら足を運び応援したい。
(白石支局・瀬川元章、大河原支局・田柳暁)

[メモ]仙台管区気象台は4月13日、蔵王山に火口周辺警報を発令。蔵王と七ケ宿、川崎の3町はお釜周辺の想定火口域から1.2キロの範囲に避難勧告を出した。約10キロ離れた蔵王町の遠刈田温泉などでは宿泊キャンセルが相次いだ。警報は6月16日に解除され、想定火口域への立ち入りを自主規制する措置に切り替わった。同22日には蔵王エコーラインが全線開通。県などは安全と観光の両面で対策を打ち出したが、観光客の減少傾向が続く。


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2015年12月22日火曜日


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