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<検証 制度>生活再建 支援どこまで

東北管区行政評価局などが主催した「被災者支援特別行政相談所」=2011年6月、気仙沼市

 もしも東日本大震災クラスの大災害に再び見舞われたら、頼りになるのは何か? 家族が犠牲になり、住まいが壊れ、職がなくなり、子どもの就学にも困るようになったら…。東日本大震災の後、被災者を救済する各種制度が設けられた。震災の前からあった制度でも、被災者の生活再建に役立つものがある。仙台市の架空の一家が被災したと想定し、これらの制度を使ってどこまで生活再建できるか検討してみる。

【想定】津波で父犠牲…休業…仮設…進学…住宅ローン…車大破…

 再び起きた東日本大震災級の地震で、仙台市太白区に住む武田真郎さん(41)=仮名=一家は大切な家族を失い、暮らしの基盤も揺らいだ。
 被災前は父=当時(73)=、母(69)、妻(39)、長男(18)、長女(12)と6人暮らし。行動派だった父は沿岸部をドライブ中に津波で命を落とした。
 真郎さんは勤務先の会社が津波の影響で事業休止となり、家族で移り住んだ仮設住宅から職探しに出掛ける毎日だ。母には年金収入があり、妻がパートで稼いでくれている。これらを合わせても、一家を支えるまでの経済的余裕はない。
 長男は高校3年で大学受験を控えている。長女は公立中学校に進学予定だが、入学時に必要な費用を用意できるか、心もとない。
 自宅は一戸建ての持ち家。地震により「全壊」の判定を受けた。住宅ローンは約20年分残っている。貯金では自宅の補修費用を賄えないため、新たな借り入れを考えている。
 津波の犠牲になった父が運転していた車は、ぐしゃぐしゃに大破した泥まみれの状態で見つかった。

◎暮らし

<災害弔慰金/生計維持者500万円>
 災害で命を落とした人の遺族に支給される。支給額は、生計維持者が死亡した場合は500万円、その他の家族が亡くなった場合は250万円。国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつを負担する。居住する市町村か都道府県が窓口となる。宮城県の場合、東日本大震災での支給額は計318億3000万円、支給件数は1万713件(いずれも11月末現在)。

<被災者生活再建支援法による支援金/全壊ならば100万円>
 住宅の被害程度と再建方法に応じて、被災世帯に支給される。基礎支援金は「全壊」が100万円、「大規模半壊」が50万円。加算支援金は「建設・購入」が200万円、「補修」が100万円。単身世帯は各金額の4分の3の額となる。

<災害義援金の配分/被害に応じて支給>
 東日本大震災では、日本赤十字社などの義援金受付団体が集めた義援金を、人的被害や住宅の被災状況などに応じ該当する被災者や被災世帯に分配している。宮城県の場合は国や県などがことし7月までに、死亡・行方不明者1人当たり120万円を遺族に、全壊した世帯には111万円をそれぞれ支給した。宮城の支給額は合計約2115億9310万円、支給対象者は約220万6000人に上る。

<災害復興住宅融資/低金利で負担軽減>
 自然災害で被災した住宅の早期復興を支援する住宅金融支援機構の制度。補修の場合は730万円の限度額に対して年利1%(12月17日現在)、返済期間は最長20年、金利は全期間固定−など返済の負担感を軽減する優遇措置を設けている。被災した日から2年間受け付けている。

<二重ローン対策/資金手元に減免可>
 第三者機関の調停に基づき、金融機関が被災者の債務の放棄や減免に応じる仕組み。東日本大震災でローンの返済が難しくなった被災者を対象に運用されている。被災者は生活資金を手元に残しながら、返済の繰り延べやローンの減免が可能となる。住宅ローンやその他の借入金の返済で一部免除などの措置が受けられた事例は、被災地全体で1324件(12月18日現在)に上る。

◎教育

<小中学生の就学援助措置/学用品費など給付>
 東日本大震災で被災したことで経済的に困窮し、就学が困難になった児童や生徒の保護者を対象に、必要な学用品費や通学費、遠足などの校外活動費、給食費などを給付する措置。実施した市町村に対して国が全額、費用を負担する。宮城県では2011〜14年度に延べ4万4676人が援助を受けた。

<日本学生支援機構の奨学金/返済に猶予措置も>
 大学や大学院、短大、高専などに通う被災世帯の学生と生徒を対象とする奨学金。無利息の第1種と、利息付きの第2種の2種類がある。在籍する学校を通じて申し込む。返済については経済状況などに応じて猶予措置を設けている。

◎労働

<失業給付の特例措置/離職とみなし手当>
 災害救助法の指定地域にある事業所が被災により事業を休止または廃止し、従業員が休業を余儀なくされた場合、雇用保険法上の離職とみなし失業手当を支給する仕組み。受給できる金額や期間は、雇用保険への加入期間や年齢などによって変わる。

<未払い賃金の立て替え払い制度/国が6ヵ月分支給>
 勤務先の中小企業が倒産状態になり、賃金が支払われなかった場合、未払い賃金の80%を限度に、国が事業主に代わって立て替え払いする。支払われる賃金は、解雇や退職の日からさかのぼって6カ月間の未払い賃金に限られ、受給者の年齢によっても変動する。

◎税金

<自動車重量税の廃車還付制度/車検残存分が対象>
 災害で自動車が全損するなどした際、車を解体後に永久抹消登録などの手続きを行えば、車検の残存期間分の自動車重量税が還付される。所有者が亡くなっている場合、死亡者が除籍された戸籍謄本を添え、相続人が申請できる。

<国税の特例措置/申告で所得税減免>
 自然災害などで住宅や家財が損害を受けた場合、確定申告により、所得税の軽減や免除を受けることができる。申告する際、「所得税法に定める雑損控除」と「災害減免法に定める税金の軽減免除」のうち、どちらか有利な方法を選べる。

◎兵庫県の独自救済制度/創設10年、加入頭打ち

 阪神大震災を教訓に、兵庫県は住宅再建を支援する共済制度を独自に創設し、ことしで10年を迎えた。加入率は低迷している。全国的な制度化も訴えるものの、他県では目立った動きが出ていない。
 11月末時点の加入率は9.3%(約16万5千戸)。当初目標としていた50%には程遠く、その後修正した15%にも届いていない。
 1995年に阪神大震災が発生した当時、国の支援は限られていた。「二重ローン」が被災者を苦しめた。このため兵庫県は2005年に「兵庫県住宅再建共済制度」を始めた。
 年5000円の負担で、地震などで半壊以上と認定されると10万〜600万円の給付を受けられる。これまでに約280件、計約5億7000万円が支払われた。
 ここ2年は加入率の伸びが年0.2%と頭打ち。14年度は新規加入者の半分に当たる約3600人が保険の見直しや「災害が起きずメリットもない」との理由で契約を更新しなかった。
 国は昨年、有識者会議で「この共助の仕組みが全国に広がることを期待する」との見解をまとめたが主導する動きは見えない。熊本県の担当者は「兵庫のように運営に必要な人員や経費を負担できない」と言う。
 兵庫県の井戸敏三知事は「国や自治体の財政状況では災害時の支援金に税金を充てることが難しくなるだろう。全国的な制度作りの重要性を訴えていきたい」と話している。

兵庫県の住宅再建支援共済制度の加入率の推移

2015年12月23日水曜日

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