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<検証 制度>生活再建の要 6割分からず

住宅再建説明会で、被災ローン減免制度の利点を紹介する仙台弁護士会の弁護士=11月29日、宮城県南三陸町

◎震災4年9カ月(2)被災ローン減免

 影も形もなくなった家のために毎月約10万円を払い続けている。
 岩手県陸前高田市の女性(67)は自宅ごと津波に流された。命は助かったが、2000万円近い住宅ローンが残った。
 東日本大震災の発生から1年数カ月後、金融機関の猶予期間が終わり、返済を求められた。テレビで被災ローン減免制度の存在を知り、運営する窓口に電話相談した。
 「対象にならない」と言われた。夫や長男の職場は被災せず「収入に影響がない」と判断された。「支払い不能」の要件に該当しないという。
 「夫は岩手県外で単身勤務。生活費が余計に掛かる。しかも、定年となって現在はアルバイトの身分。年齢面からいつまで働けるのかも分からない」と不安を口にする。

<「画期的」と期待>
 被災者の二重ローン問題を解消し、生活再建を後押しする−。ローン減免は「画期的な制度」と期待された。借金返済は災害時でも、自己責任が基本とされてきたからだ。
 2011年8月の運用開始から現在までの実績はグラフの通り。宮城862件、岩手349件、福島73件など、計1324件の債務整理が成立した。国は当初、1万人の利用も視野に関連予算を確保していた。
 宮城県気仙沼市の東忠宏弁護士は被災地の専門家として40件程度の成立に携わった。「ローン減免は復興を進める上で有効な制度。ただ必要とする被災者はもっといたのでは」と感じている。
 制度の調停役となる運営委員会(本部・東京)には、約5600件の相談が寄せられた。陸前高田市の女性のように、適用要件に当たらないと判断されたケースは少なくない。債権者が減免に同意せず、不成立になった例もある。
 運営委は「被害に遭っても支払い能力がある人の債務まで免除できない」と説明。仙台弁護士会は「要件が厳しい。生活や事業再建の観点から対象を広げるべきだ」と反論する。

<義援金を返済に>
 関係機関による説明会や金融機関からのダイレクトメールなど周知活動が展開されたが、制度浸透の難しさもあらわになった。
 東北財務局は14年、仮設住宅入居者を対象にアンケートを実施。住宅ローンを抱える人の約60%が制度を「知らない」か「聞いたことがあるがよく分からない」と回答した。半数以上は従来の条件のまま返済を続けていた。
 陸前高田市の別の60代女性は震災の2年後、知人から聞いて手続きするまで毎月支払っていた。「借りたお金は何とか返さないと、とばかり思っていた。貯蓄できなかった」と話す。
 制度開始は震災から5カ月後。仮設住宅入居者は対象にならないなど、当初は間口が狭かった。制度ができる前や改善されるまでに、暮らし再生のために使う義援金などをローン返済に充てた人もいた。
 大災害が発生した際の債務整理に素早く対応できるよう、全国銀行協会、日弁連などは減免制度の恒久化を目指している。

[被災ローン減免制度]正式名称は「個人版私的整理ガイドライン」。破産と異なり、新たなローンが組めない心配がなく、原則として保証人にも請求されない。義援金や生活再建支援金、弔慰金に加え、500万円まで手元に残せる。金融機関、弁護士、税理士らでつくる第三者機関が運営する。法的拘束力はなく、全債権者の同意が成立の条件。専門家による支援は無料。


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2015年12月24日木曜日

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