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<中間貯蔵>30年後の返還 確約を

転居先の庭にある畑で雑草を取る池田さん夫妻=14日、南相馬市原町区

◎故郷を手放す地権者(中)6代目の責任

<先祖伝来の地>
 先祖から引き継いだ土地だ。30年後には必ず返してほしい。その確約があれば、契約を考える。
 福島県双葉町郡山に住んでいた池田耕一さん(84)は、江戸時代から続く農家の6代目だ。自宅と田畑は東京電力福島第1原発事故で出た除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設予定地になった。
 山陰地方から移住してきた先祖は代々、水田開発に励んできた。自分も自動車学校の教官や第1原発の警備員をしながら、田んぼを開いた。先代より1ヘクタール増やし、事故前には7ヘクタールで耕作していた。
 原発事故が起き、生涯をかけて向き合った田畑に放射性物質が降り注いだ。帰還困難区域に自宅は含まれた。郡山市のアパートから一時帰宅した時のことだ。田畑は雑草が伸び放題で、柳までが生えていた。「元通りの原野になってしまった」。涙が止まらなかった。
 せめて住み慣れた浜通りに戻ろうと、2013年4月、南相馬市原町区に庭付きの中古住宅を買った。早速、庭土を入れ替え、キャベツやブドウを育てた。植物が芽吹き、実を結ぶ姿に元気づけられた。

<条件付き賛成>
 中間貯蔵施設の建設には当初、反対だった。13年8月に福島市で開かれた住民説明会で訴えた。「先祖が寝ずに築いた財産だ。絶対に手放せない」
 除染が本格化し、廃棄物を詰めた黒い袋が至る所に山積みされていく。「これを片付けないと、復興は進まない」。そんな思いも芽生えた。昨年夏、国が用地の賃貸を認める方針を発表した。施設自体に反対している地権者が多いようにも思えず、条件付きの賛成に転じた。

<多くは懐疑的>
 施設をめぐっては、搬入開始から30年後に廃棄物を福島県外に搬出することが法律で定められている。
 廃炉が進み、除染などで放射線量が下がれば、帰還できる日が来るかもしれない。営農再開は難しくても、先祖伝来の土地に子孫が戻れる選択肢を残したい。
 ただ、多くの地権者は県外搬出には懐疑的だ。「結局、最終処分場になるんじゃないか」「だれも戻らないんじゃないか」。地区の集まりでは、決まってそんな話になる。
 賃貸契約に返還時期を明記するよう求めるつもりだ。それが6代目の責任だ。
 10月下旬、補償額算定のための国の現地調査に立ち会った。「40代の頃、スコップ1本でこの水路を掘り上げたんだ」。先祖と自分の汗が染みこんだ土地への愛着と誇り。職員たちに伝わっただろうか。


2015年12月25日金曜日


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