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<川内原発>要援護者避難に不安

車いす生活の高齢者も多い「わかまつ園」。避難計画の実効性に課題が残る=鹿児島県薩摩川内市

 国内の原発で唯一稼働している九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の周辺で、高齢者ら要援護者の重大事故時の避難が難題となっている。半径10キロ圏の病院や福祉施設の関係者からは「(策定済みの)避難計画通りに逃げられるか不安」との声が漏れる。現地を訪ね、東北の原発立地地域も直面する課題を探った。(東京支社・小沢邦嘉)

<平均90歳超す>
 川内原発から東に約5キロ、薩摩川内市の農村部にある高齢者福祉施設「わかまつ園」。グループホームと有料宿泊施設に、認知症の高齢者を中心に約30人が入居する。平均年齢は90歳を超える。
 原発の半径5キロ圏は東京電力福島第1原発事故後、予防的防護措置区域(PAZ)と定められ、重大事故時に即時避難を求められる。浜田時久園長は「九州電力は事故がないよう万全を期してほしいが、自分たちも入居者の命を守るため防災に取り組む」と話した。
 わかまつ園は昨年3月、避難計画を策定した。30キロ以上離れた鹿児島市内2カ所の社会福祉施設を避難先とし、入所者のほか職員20人が車両15台で移動する。経路は2ルートを定め、夜間の職員招集ルールも設けた。
 それでも浜田さんは「認知症の入所者が、指示に従ってくれるか不安。自然災害なら周辺住民の支援を得られるが、原発事故は地域全体が逃げる難しさがある」と険しい表情で語った。
 5キロ圏にはこのほか、病床約200の病院1施設と四つの社会福祉施設がある。

<ルートは1本>
 原発からわずか約1キロの高齢者グループホーム「お多麻さんの家」(入所者18人)は、鹿児島市内の福祉施設に車で避難する計画を作った。宮内啓司事務長は「避難開始時に原発と逆方向に向かう道が県道1本しかない。そこを抜けても途中に山間部や海沿いの道があり、災害時に本当に通れるか心配」と話した。
 周辺地域の防災にも課題がある。5〜30キロ圏は緊急時防護措置区域(UPZ)に定められ、事故時は屋内退避の後、一定値以上の放射線が測定されれば避難が求められる。だが、10キロ以遠の施設のほとんどは具体的な計画がない。
 県が「10〜30キロ圏は風向きなどを考慮しながら柔軟に対応する」と判断したのが理由で、事故時の避難先選定には県独自の原子力防災・避難施設等調整システムを活用する。事前にUPZ圏の福祉施設の入所者数といったデータと、受け入れ可能施設のデータを登録し、事故時に避難先候補を調整する仕組みだ。
 周辺自治体には不安も残る。いちき串木野市は川内原発の南に位置し、全域が約20キロ圏に含まれる。市の防災担当者は「避難車両の確保など、詰め切れていない課題もある。防災体制の不断の見直しが必要な状態だ」と懸念を示した。

[川内原発]加圧水型軽水炉(PWR)が2基あり、ともに出力89万キロワット。東日本大震災後、2011年9月までに2基とも運転停止。九州電力は13年7月、原子力規制委員会に新規制基準への適合性審査を申請、14年9月に全国で初めて適合が認められた。ことし8月に1号機、10月に2号機がそれぞれ再稼働した。


2015年12月28日月曜日


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