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<復興印宮城流>訪れて味わう新名物に

「鮨智」のメカジキのしゃぶしゃぶ。旬の秋から春は、すしだねにもなる
水揚げされたメカジキが並ぶ気仙沼市魚市場。口先の細長い吻(ふん)は切り取られ、ジーンズ素材として活用する地元企業もある

 東日本大震災からまもなく5年。震災で苦境に立たされた地域で、地域の元気を取り戻す試みが続いている。どれもが「MIYAGI WAY」(宮城流)。風土に根差した取り組みは、復興のけん引力になってくれるはずだ。

◎(1)メカジキのしゃぶしゃぶ(気仙沼)

<「最高の食べ方」>
 宮城県気仙沼市と言えばカツオやサンマを思い浮かべるかもしれないが、メカジキの水揚げ量も生鮮で国内の7割を誇る。脂が乗った刺し身をしゃぶしゃぶにする新名物「メカしゃぶ」は、震災からの復興を担う味だ。
 「メカジキは生はもちろん、煮ても焼いてもおいしい万能魚」と、同市田中前にある「鮨智(すしとも)」の親方小野寺智之さん(47)。小野寺さんの勧める「最高の食べ方」はこうだ。
 昆布だしの鍋にユズの皮、水菜、ネギ、シイタケを投じる。その鍋に薄切りの身を2、3回くぐらせ、野菜をくるむ。特製のポン酢に浸して口の中に入れると、とろける食感と同時にじわっと甘みが広がる。脂はしつこくなく、高齢者も食べやすいという。
 同市の一般社団法人リアス観光プラットフォームの呼び掛けで、小野寺さんをはじめ地元の料理人6人が昨春に考案した。メカしゃぶと、すき焼きの「メカすき」の2種類がある。
 「分け魚」。万能魚のもう一つの呼称だ。気仙沼市は古くから近海はえ縄船の漁業基地として栄えた。三陸沖でマグロとメカジキの漁場が重なり、マグロは市場へ、メカジキは市民に配られ(分けられ)て親しまれてきた。
 「マグロの水揚げが減った今はメカジキが主役。なのに市外ではあまり知られていない」。産学官連携で被災地支援する「東北未来創造イニシアティブ」気仙沼スタッフの関沢太郎さん(33)は言う。

<魚価の安定にも>
 観光復興の目玉の一つにしようと昨年9月、気仙沼商工会議所がブランド化推進委員会を設立。関沢さんはPR動画や本の作成に関わる。同11〜12月に飲食店11店が催した「気仙沼メカジキフェア」も好評でメニューに定着している。
 近海はえ縄船は苦境にある。国の補助が昨年4月でいったん打ち切られ、船の老朽化や燃料高を背景に休漁する船が相次いだ。同12月に再び補助認定されたばかりだ。
 「メカジキのおいしさを広めることは、魚価が安定し漁業復興にもつながる」
 そう話す関沢さんは中外製薬(東京)からの出向職員。福島県浪江町出身で、気仙沼の水産業復興支援に約2年間奔走し、この年末に東京に戻った。
 「いい人といいモノがあふれる港町。大好きになった」。これからも、何度でも気仙沼を訪れて味わおうと心に決めている。
(気仙沼総局・高橋鉄男)

<魅力に気付く好循環>
 メカジキは地元ならではの食材。5年後にはメカしゃぶのほかに和洋中のメニュー開発が進み、観光客がメカジキを入り口にしてフカヒレなど多様な気仙沼の魅力に気付く好循環を期待する。地元住民の愛着も高まってほしい。(菅原昭彦・気仙沼商工会議所会頭)


2016年01月01日金曜日


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