宮城のニュース

<集団移転>住宅共同発注、建設費節減

共同発注で建築した尾形さんの住宅(手前)。「親身になってくれた」と建築家らに感謝する

 東日本大震災で被災した気仙沼市浦島地区の集団移転で、複数の被災世帯がまとまって一戸建て住宅を発注し工事が進んでいる。6戸を共同発注し、既に3戸が完成した。建築費の節減や工期短縮につなげ、住民とアドバイザーの建築家集団、住宅会社が手を携えた方式が実を結んでいる。
 同市小々汐の集団移転団地の新居で、養殖業の尾形芳夫さん(59)が「震災前に比べると狭いけど、おかげさまで落ち着けた」と笑みを浮かべた。昨年9月に暮らし始めた家は総2階の5LDK、延べ床面積約120平方メートル。家族6人が暮らすには十分な広さだ。
 尾形さんは自宅や工場が津波で流失。工場再建に自己資金を投じ、自宅の再建費は全額ローンで2000万円が限界だと悩んでいた。
 共同発注で完成した尾形さん宅の建築費は1坪(3.3平方メートル)当たり50万円台と、市内の新築物件に比べ2〜4割低い。尾形さんは「想定した建築費に収まった」と感謝している。
 気仙沼湾を望む浦島地区では3カ所計52世帯で集団移転が計画される。共同発注方式は住民と、NPO法人日本国際ボランティアセンター(東京)が同地区に派遣してきた建築家が構築し、6世帯が手を上げた。
 6世帯は、地元建材店など3社が設立した「フェニーチェホーム気仙沼」(気仙沼市)に一括発注。間取りや仕様といった基本設計や建築中の現場確認は、住民から家造りの要望を聞き取った建築家が担当した。
 同社は工期を調整して資材の運び込みや職人確保を効率化。建築家への手数料は建築費の10〜15%掛かる通常に比べ、一律50万円に抑えたという。
 建築家の佐々木龍郎さん(51)=東京都=と小津誠一さん(49)=金沢市=は「6戸は総2階やロフト付きの平屋などで、間取りも自由度があった。被災地では難しい適切な品質価格の家が実現できた」と話す。
 浦島地区3カ所のうち、同市大浦の集団移転事業協議会で会長を務める熊谷和裕さん(63)は「共同発注は住宅再建を断念したり、再建が遅れたりして取り残される人を出さないためのセーフティーネットとして考案した」と振り返る。
 気仙沼市では地元工務店グループが災害公営住宅の一戸建て・長屋約800戸を建設。地域で施工者が不足してしまうのではないかという不安が広がった。
 他の被災地では共同発注の導入を検討した地域はあるが、実現させたケースは少ない。浦島地区には建築家集団が2012年から毎月入り、助言や住宅勉強会を重ねた。
 同協議会事務局長の小野寺司さん(60)は「住民と建築家、住宅会社が一緒に考えたプランは、信頼感があると住民の支持を得た。次の大規模災害時に優れた住宅再建手法として活用されれば、再建を諦める人が減るのではないか」と手応えを感じている。


2016年01月10日日曜日

先頭に戻る