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<検証災害公営住宅>完成待てず再建、退去者も

コミュニティーに配慮した造りなのに肝心の入居者がまばらな災害公営住宅=8日、大崎市

 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の被災者向けの災害公営住宅で、計951戸の空室が生じている。災害公営住宅への入居を当初は希望していながら、震災後の月日がたつ中で住宅再建プランを見直した被災者が少なくないためとみられる。いったん入居したものの退去する被災者も出てきている。これから完成する建物でも入居者が決まらないケースが見られる。被災者の暮らし再生の場として整備が進む災害公営住宅だが、空室はさらに増える可能性もある。

<防犯など支障>
 3県の災害公営住宅の空室の状況は表の通り。昨年11月末までに計画の約半数に当たる1万3427戸が完成したが、7.1%が空室となった。空き戸数は陸前高田市103戸、宮城県亘理町101戸、いわき市81戸の順で多かった。
 大崎市鹿島台の災害公営住宅は、コミュニティーへの配慮から長屋同士の玄関が向かい合う構造となっているが、一戸建て5戸を含む45戸のうち23戸が空いている。空室が多ければコミュニティー形成や防犯に支障が出かねない。
 両隣が空室になっている入居者の女性(73)は「せっかく建てたのに税金がもったいない」とこぼす。
 市は2011年12月と12年5月の意向調査を基に170戸を建設。地震被害を受けた市民だけでなく、石巻市など沿岸部から避難した人も入居を希望していたが、市の担当者は「数年たつうちに気持ちが変わり、自力で再建した新居や、よその災害公営住宅に移ってしまった」と話す。

<集合型敬遠?>
 入居後に退去する例も増えている。少なくとも岩手県で32戸、仙台市で18戸が一度は入居者がいた中古物件だ。自力再建への転換や福祉施設への入所、入居者の死亡などが原因という。
 7戸が退去した仙台市宮城野区の田子西災害公営住宅の町内会長川名清さん(67)は「騒音トラブルで出て行った人もいる。震災前は一戸建てに住んでいた被災者が多く、集合住宅の生活に慣れない面があるのではないか」と指摘する。
 建設中の災害公営住宅でも、既に募集を終えたのに入居者が決まらない物件が出ている。
 仙台市で3月末に完成する太白区茂庭台1丁目の災害公営住宅では、100戸中38戸で希望者がいない。
 他の自治体も陸前高田市66戸、大船渡市13戸、釜石市16戸などで入居者が未定だ。宮城県南三陸町では入居者が決まっていない32戸について募集しても、全戸数分は埋まらなかった。
 空室の発生は、交通の便など住宅の立地条件に起因する場合もあるが、仮設住宅などでの仮住まいの長期化が大きく影響しているとみられている。岩手県沿岸部の市の担当者は「着工が遅い住宅ほど空きが目立つ」と明かす。

 街や集落が壊滅的被害を受け、多くの命が犠牲となった東日本大震災と、未経験の困難を突き付けた東京電力福島第1原発事故から、もうすぐ5年になる。再生を期す被災地の復興の扉は少しずつ開きつつあるが、まだまだ道半ばだ。何が進んで何が足踏みし、どんな新たな課題に直面しているのか。「震災5年」をさまざまな視点から検証していく。(震災取材班)


2016年01月11日月曜日


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