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<成人式>亡き父へ「振り袖見て」

久々に再会した友人と記念撮影する川崎さん(左から2人目)=釜石市の釜石高

◎防災・避難行動伝えたい/釜石・川崎美穂さん

 「私たちは訓練通りに頑張っただけ。決して奇跡ではない」。岩手県立大2年川崎美穂さん(20)は古里・釜石市の成人式に出席し、5年前の行動にあらためて思いを寄せた。
 釜石東中3年の卒業式前日に震災に遭った。避難訓練や防災教育で徹底された「率先避難者になれ」という教え。無我夢中で、生徒らは校舎から高台を目指して駆けた。その姿は隣接する鵜住居小の児童や周辺住民の避難を促した。
 市内の小中学生のほとんどが無事だった避難行動は「釜石の奇跡」と世界中に伝わる一方、欠席した子どもら5人が犠牲に。遺族への配慮などから、市内では「釜石の出来事」と言う。奇跡ではなく防災教育の成果。川崎さんも、そう伝えたいと思いを新たにする。
 川崎さんは同学年の女子生徒のほか父進さん=当時(50)=を亡くした。
 「お父さん、きょうは成人式だよ。振り袖姿を見てね」。式に向かう前、遺影に語り掛けた。ドライブが好きで優しかった父。「高校の制服姿も大学の入学式も見せられなかった。一緒にお酒を飲みたかったな」
 父は遺体で見つかった。泣き続ける母を必死に慰めた。入学した釜石高で担任に父の死を打ち明けたとき、張り詰めた気持ちが緩み、涙がどっとあふれた。
 県立大では環境問題を学ぶ。卒業後は釜石に戻り、就職するつもりだ。復興には若い力が必要。災害公営住宅で暮らす母を安心させたい。「釜石で働き、復興に携わりたい」


2016年01月11日月曜日

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