宮城のニュース
  • 記事を印刷

<復興印宮城流>若者の地元愛の拠点に

百俵館で開かれたまちづくりを考える講演会「カワノカミ大学」=昨年11月
百俵館のカフェスペースでスタッフらと談笑する利用者(左)

◎(11完)川の上プロジェクト(石巻)

<新旧住民融和を>
 木のぬくもりに包まれた空間に本が並ぶ。住民らが講演に耳を傾ける。
 宮城県石巻市小船越の川の上地区の私設図書館「百俵館」で昨年11月、「カワノカミ大学」が開かれた。
 地方での生き方や働き方を研究する編集者の紫牟田伸子さんが語る。「人口減少や公民連携などに対応するためには、従来の価値観と異なる豊かさを持つ地域を築く必要がある」。参加した約40人の住民も交えて議論に花が咲いた。
 カワノカミ大学は、川の上地区の住民組織「石巻・川の上プロジェクト」の活動の一つだ。有識者を招いて年4回、講演会を開いている。
 地区では今、東日本大震災の集団移転地の整備が進む。プロジェクトは、地区の仮設住宅に住む被災者を巻き込み、まちづくりに取り組む。
 移転地が完成する2017年度以降、仮設住宅などから既存世帯とほぼ同数の約400世帯が移り住む。被災者と住民の融和は地区の課題だった。
 危機感を持つ住民有志が13年3月にプロジェクトを立ち上げた。「新旧住民でまちづくりを考えよう」。そんな思いで「大学」などの活動が始まった。

<面白い構想次々>
 講演会は紫牟田さんで11回を数える。会場となった百俵館も、本でコミュニケーションを図る講演がきっかけとなり誕生した。
 住民たちがボランティアらと協力し、築80年の旧農協作業所を改修。教育の重要性を説く長岡藩の「米百俵」の精神から名前を取り、昨年4月に開館した。
 三方の壁は本棚で、約3000冊が並ぶ。カフェを併設。地元の女性らがコーヒーや地元パン屋の手作りパンを販売する。誰もが気軽に足を運べる交流拠点となった。
 近くの仮設住宅に暮らす無職武山久仁男さん(75)は「看板を手作りするなど活動を支援している。声も掛けてもらえる。何より集まる場所があるのはありがたい」と感謝する。
 都市部に遠い川の上地区は、若者の流出が続く。運営委員の三浦二三穂さん(35)は「都市ではなくても面白い体験ができる。それを証明したい」と語る。
 百俵館ではコンサートや演劇のほか、地元住民による野菜や手芸品を毎月販売する手作り市を開催。裏山で薬草を育てたりする「里山学校」の構想もある。
 三浦さんは思いをはせる。「プロジェクトが地域に関わるきっかけになり、若者に地元への愛着を呼び起こせればいい」
(石巻総局・高橋公彦)

◎担い手多様化に期待

 5年後には集団移転地の造成が完了し、仮設住宅からの移転が進展している。新旧住民の交流が活発になっているといい。地域の住民が自主的にイベントを企画するなど、担い手の多様化も進んでいてほしい。(三浦秀之・石巻・川の上プロジェクト運営委員長)


2016年01月12日火曜日

  • 記事を印刷

先頭に戻る