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福島の文化財復旧着々 沿岸部は先行き見えず

震災前の姿を取り戻した大安場古墳=郡山市

 東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の文化財の復旧作業が進んでいる。震災から丸5年が迫り、多くの史跡が震災前の姿を取り戻しつつある。一方で東京電力福島第1原発事故が影を落とし、復旧の先行きが見えない文化財もある。(跡部裕史)
 東北最大の前方後方墳の国指定史跡「大安場古墳」(郡山市)。震災の揺れで長さ約30メートルの亀裂が入ったが、2013年7月に修復が完了。15年に古墳時代のつぼのレプリカ50個が古墳に設置され、震災前の姿に戻った。
 白河市の国指定史跡「小峰城跡」は石垣が崩落した。本丸南面の復旧工事が終わり、15年4月に一般開放を再開、18年度を目標に全面修復を目指す。南相馬市小高区の国史跡「大悲山石仏群」は、観音堂の千手観音像を保護する「覆屋(おおいや)」が倒壊。市の再建工事は今月終わる。
 「専称寺」(いわき市)は、浄土宗の歴史を伝える建造物として重要文化財の指定を受けた本堂と総門が震災で全壊した。修復作業で総門はほぼ組み上がり、本堂は18年を目標に修理中だ。新地町に1872年の学制発布に先立って開設された県指定史跡「観海堂」は津波で消失し、町は再整備を検討する。
 復旧が難しい文化財もある。古墳時代の人物や狩猟の様子、渦巻き文様が描かれた国史跡「清戸迫(きよとさく)横穴」(双葉町)は、放射線量が高い帰還困難区域にある。自由に立ち入ることができないため、管理は困難を極める。
 双葉町は温度や湿度の変化を調べているほか、外から入り込む木の根を伐採するなどしている。町教委の吉野高光総括主任主査は「今のところ大きな変化はないものの、これ以上劣化させないための対策が必要」と話すが、有効な手だては見つかっていない。
 行政から指定を受けていない文化財の保護も課題だ。県などが進める文化財レスキューは今後、市町村の所蔵物から古文書などの個人所有の資料に重点を移す計画だが、資料が原発事故の混乱で紛失したり、野生動物の仕業で破損したりしている恐れがある。
 福島県立博物館の荒木隆主任学芸員は「新しい福島をつくっていくとき、自分たちの立ち位置を考える上でも文化財は欠かせない」と強調。「指定文化財の復旧は進むが、それ以外の文化財は目に付きにくい。情報を素早く察知し、保管しなければならない」と話す。


2016年01月12日火曜日

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