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<その先へ>営農再開 帰村の光に/野菜作り 大学と連携

「チャレンジハウス」で試験栽培中の野菜の生育を見る菅野さん(右)と千恵子さん=福島県飯舘村佐須

◎農業 菅野宗夫さん=福島県飯舘村

 東京電力福島第1原発事故で全村避難中の福島県飯舘村で、農業菅野宗夫さん(64)がことし、地元の佐須地区で営農を再開する。2017年3月までの避難指示解除を前に、大型ハウスの野菜作りを計画している。「チャレンジハウス」と名付けた試験棟で明治大の研究者が提案する栽培方法に挑み、生育は上々だ。
 チャレンジハウスは約170平方メートル。自宅の除染が終わった後の昨年5月、村民の生業再開を支援しているNPO法人「ふくしま再生の会」(田尾陽一理事長)のメンバーが建て、菅野さんと妻千恵子さん(63)が野菜の栽培試験を始めた。
 栽培養液と井戸水を自動で混ぜてハウス内の畑に行き渡らせる方式。天気と温度、土の乾湿状態などをセンサーが常時把握し、6時間先の予報も織り込んで、養液と水の混合比、量などを調整する。データを大学の研究室が共有する。

 明大農学部の研究者らが川崎市の企業と共同開発した。菅野さんは、原発事故が起きた11年から農地を研究用に開放。再生の会と一緒に除染方法の開発やコメなどの栽培試験を重ねており、その一環として「新しい技術を被災地の復興に生かしてほしい」(竹迫紘同大黒川農場客員研究員)と提案した。装置のコストは100万円程度という。
 菅野さん夫妻は、除染後に盛られた安全な土を堆肥で肥やし、パプリカ、ピーマン、レタスなどの栽培を試してきた。「生育が旺盛で、土も常に最適状態なので病気が出ない」と話す。
 計画するのは自宅前の水田を利用する10アール規模のハウス作りと、試験成果を生かした果菜類の本格栽培だ。政府方針の避難指示解除に先駆けるのは「帰村を希望する農家の参考にしてもらうためで、1年でも早く実践に移したい。チャレンジハウスでの試験も続け、データは村に提供する」。新年度の復興加速化事業としての助成を村に要望中だ。

 果菜類は摂取制限の対象外で、福島県のモニタリング検査を通れば販売は可能だ。「問題は風評だが、これまで積み重ねた除染や土壌、栽培などあらゆるデータがあり、支援で関わってくれた人たちの後押しもある」と話し、佐須地区の住民協働の場に広げたいと構想を膨らませる。
 自宅前の水田では、再生の会、東京大福島復興農業工学会議と12年からコメの試験栽培に挑み、収穫したコメは、やはり試験的に受けた地元農協の検査をおととしから2年続けてパスした。「そんな成果をこれから、信頼につなげていきたい」(寺島英弥)


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2016年01月13日水曜日

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