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<全町避難>原発事故前の町の記憶残したい

資料の搬出や蔵の状態などを確認する富岡町の専門プロジェクトチーム=福島県富岡町

 東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県富岡町が、被災家屋の解体が進む前に、旧家や土蔵など地域の営みを伝える建造物の保存に向けて調査を急いでいる。先人たちが築いてきた風景を一部でも残し伝えることで、原発事故以前の暮らしの記憶や文化を次代に引き継ぐ狙いだ。
 調査対象は主に近世から明治・大正期にかけての建造物。町の「歴史・文化等保存プロジェクトチーム(PT)」が所在地把握などを進めている。地図での一覧化とともに建築年などの情報を加えリストを作成。建物を所有する住民に対して、保存を働き掛ける。
 富岡町は江戸期に宿場町として栄え、明治期には郡役所が置かれるなど交流の拠点だった。明治期以降はれんが工場が操業し、今もれんが造りの蔵が点在する。宿場の面影を残す町中心部の商店街には、老舗呉服店などが立ち並ぶ。
 町職員で同PTメンバーの門馬健学芸員は「当時の経済規模や生産力など、建造物は地域性を物語る」と保存活動の意義を説く。
 町内では復興拠点整備に伴い、富岡駅周辺などで国による家屋の解体作業が本格化。PTは既に民家に残された日記や写真を搬出する活動を進めており、今後は旧家などの所有者の協力を得ながら、資料と建物の保存を一体的に進める構想だ。解体される場合でも、図面での記録も想定する。
 茨城県つくばみらい市に避難する山田一成さん(64)の富岡町の自宅では、PTが昨年9月、資料の搬出と蔵の状態などを確認した。
 山田さんは「この辺りは皆さん蔵を持っている。うちのコメ蔵は比較的新しい時代に造られたのではないか。資料や建物が何らかの役に立てばうれしい」と先祖の来歴などを思い返しながら話した。
 富岡町などで構成する双葉郡は原発避難区域が集中する。門馬学芸員は「双葉地域を語る起点が『原発事故』に一元化されてしまう恐れがある。そうならないために、地域の成り立ちや営みを伝える手掛かりを保存し、後世に伝え残すことが大切だ」と訴える。


2016年01月15日金曜日


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