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<検証 阪神から>子どもの影響 進行形

[にしだ・まさひろ]国学院大文学部卒。15年4月から現職。交通遺児育英会職員時に阪神大震災が発生。ボランティアで遺児・孤児の調査や支援に当たった。55歳。福岡県生まれ。

◎震災5年へ(中)遺児支援/あしなが育英会東北事務所長 西田正弘さん

 −1995年の阪神大震災をきっかけに誕生した遺児たちが集える支援施設「レインボーハウス」を、東北でも仙台、石巻、陸前高田市に開所した。
 「遊んでむしゃくしゃした気分を発散したり、おしゃべりしたりしながら、子どもたちが『一人じゃないんだ』ということを実感できるように心掛けてきた」
 「阪神で分かったのは、子どもの心の安定には保護者の心の安定が欠かせず、並行した対応が必要ということ。施設では同じ境遇の親同士も話し合える。ただ、運営スタッフが限られている上に東北は神戸よりはるかに広い。親子が集いに参加しづらいという悩みがある」

<状況は個別化>
 −遺児たちは、どんな環境にあるのか。
 「時がたつほどより個別化している。母子家庭で母親を亡くしたある子は親類に預けられたがうまくいかず、児童養護施設で暮らした後、新しい里親の元で落ち着いた。父親を亡くした遺児は『再び災害になったら会えないのでは』と不安で家族から離れられず、不登校が続いている。学費の支援を受け進学しても、生活苦で退学する子もいる」
 「震災が過去になっていく一方、子どもへの影響は現在進行形で起きている。それを理解しないと必要なサポートにつながらず、状況がさらに悪化する恐れがある」

 −阪神と異なり、親が行方不明の子が少なくない。
 「遺児たちの集いで自己紹介するとき、『津波で親を亡くした』と言えない子がいた。遺体を見ていないのでちゃんとお別れできず『あいまいな喪失』を抱えながら生きている。もう諦めないとと思う子、実感が湧いてこないと言う子とさまざまだ。死をどう理解しているかによって、親子、きょうだいでも状況は違う」
 「心の持ちようは本人しか決められない。決めなければいけないというわけでもない。自己否定的になるのが一番良くない。『どれも自然な気持ちだよ』と受け止める姿勢が大切だ」

<連携再構築を>
 −これからの支援で重要なことは何か。
 「家族、親類、先生、スクールカウンセラー、野球チームの監督といった身近な大人が、子どもの状況を見極めるまなざしの精度を上げることだ。レインボーハウスも施設に来た子や保護者に対してだけでなく、子どもへの関わり方のノウハウなどをもっと発信していきたい」
 「遺児に限らず、気持ちや進学、親の貧困など子どもを取り巻く問題はさまざまで、単独で抱えきれない。被災地では、多くの官民が連携して子どもの健康改善に取り組んだり、教員関係者に外部の支援組織を周知したりしようとする動きがある。学校、行政、民間同士のつながり直しが必要だ」


2016年01月17日日曜日


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