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<適少社会>人呼び活力 創生の好機

震災の復興工事が進む釜石市中心部。止まらない人口減を踏まえた活性化策が問われている

◎人口減 復興のかたち[5]第1部兆し(5)期待と不安

 「地方創生」。人口減社会を見据え、政府が鳴り物入りで掲げた地方活性化対策は、東日本大震災の被災地に期待と不安を呼ぶ。
 岩手県釜石市中心部。大型トラックやクレーンのエンジン音がけたたましい。大津波の痕跡は薄れ、新たなまちの姿が現れつつある。
 「被災した東北こそが、地方創生のモデルになるチャンスだ」
 市内の仮設住宅で暮らす伊藤聡さん(36)は市総合戦略の策定ワーキンググループの一員。政府は人口減を前提に各自治体に戦略策定を求めている。
 伊藤さんは震災後、ボランティアの受け入れや被災地ツアーを進めてきた。参加し釜石に関わった市外在住者を「つながり人口」と位置付けるよう提案した。
 外から訪れた人に釜石を好きになってもらい、普段は遠くにいても、何かあれば駆け付けてくれる。そんな人を増やしたい、という発想だ。
 「移住のハードルは高いが、繰り返し訪れる『釜石ファン』は多い」

 交流イベント団体「三陸ひとつなぎ自然学校」代表を務める。外部の人材を取り込み、人口減で低下する地域の活力を養う仕掛けを「市と連動して実践したい」と描く。
 市は総合戦略初版を昨年10月に策定。「つながり人口」をはじめ人材誘致の組織づくりなど、市民や若手職員のアイデアを基に30施策を載せた。期待する財源は地方創生の交付金だ。
 政府は2015年度補正予算、16年度当初予算案に交付金を各1000億円計上。地方の総合戦略を後押しする。
 交付金は自治体間の取り合いになり、望みの額が配布されるとは限らない。17年度以降の交付金は全くの白紙だ。
 はしごを外される地方の懸念は拭えない。「財源には限りがある。徐々に支援を弱め、最終的に地方の自助を促す」(内閣府地方創生推進室)

 15年の国勢調査で釜石市の人口は10年比7.0%減の3万6812。人口は減り続け、市は戦略通りに進めても40年は2万7000程度と推計する。
 「人口が減少する局面で大災害は初めてなのに、政策は旧態依然のままだ」。釜石商工会議所専務の佐々隆裕さん(61)は交付金を軸にした国の発想を憂う。
 地方創生に、権限や財源の地方移譲は伴わない。「分権論議は別」と推進室。地方に知恵や競争を求めても国は制度の枠内に収めるだけ。独創性にあふれた地域づくりには限界が透けて見える。
 市の部長職を務め、行政経験が長い佐々さんは警戒シグナルを鳴らす。
 「首相や政権が変われば政策はころころ変わる。中途半端で終わるのが一番良くない」


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2016年01月24日日曜日

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