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<適少社会>乳幼児増 町の将来託す

上野さん(左)と夫の拓也さんに抱かれてほほ笑む長男の蒼(そう)ちゃん。地域の支えもあり、仕事と子育てを両立している=岩手県大槌町

◎人口減 復興のかたち[6]第1部兆し(6完)子は宝

 津波から5年目の春、1割近い住民と市街地を奪われた町に、一筋の光が差し込んだ。
 リアス式海岸に面した岩手県大槌町。0〜5歳児が東日本大震災後、初めて増えた。昨年3月末で462人。前年より14人多い。
 380人まで減るとみていた町。町内の保育所で初めて「待機児童」が出た。
 関連死を含め1285人が犠牲となり転出も相次ぐ。町の人口は2015年国勢調査で前回10年から県内最大23.2%減の1万1732。一気に10〜15年分減った。
 そんな中で増加した0〜5歳児。地元の大槌高の存続へ、先が長い復興の担い手に、と期待は高まる。町は早速、第2子以降の保育料無償化や移住者への助成金創設などを打ち出す。

 「周りで次々引っ越してしまい、この先不安はいっぱい。でも小さい子が増えたのは希望になる」。同町吉里吉里地区で両親と美容院を営む小川麻里子さん(37)の顔がほころぶ。震災翌月に生まれた4歳、7歳と13歳の3姉妹を育てる。
 母親の交流サロン「ままりば」を3年前に始めた。2人目、3人目を産んだとよく聞くようになった。
 町の年間出生数は70〜80人を保つ。女性1人が生涯に産む子の数を示す合計特殊出生率は10年が1.56。震災以降は2.0を超え、13年には2.26となった。
 「将来を託すって感じかな。ママたちが笑顔で居られる町にしたい。若い人が安心して戻れるように」。小川さんは思い描く。
 人口流出が依然厳しい中でも、復興事業や住まいの再建は少しずつ進む。転入者は13年度、前年度より増加に転じた。町全体の人口で見ると、20〜24歳の層が増し、1000人当たりの婚姻率は10年の3.7が、13年に4.5まで上昇した。0〜5歳児の増加傾向は今も続く。

 名古屋市出身の上野未生(みお)さん(40)は、支援活動を通じて知り合った地元男性と13年12月に結婚。昨年7月に長男を出産した。震災前は国際看護師として途上国支援で世界を飛び回り、結婚や出産を人生設計に組み込めなかった。
 大槌で暮らし、人生が変わった。勤め先の一般社団法人「おらが大槌夢広場」には子連れ出勤。職場や買い物先で子どもが泣きだしても困ることはない。スタッフや近所の人が手を差し伸べる。「出産か仕事か、二者択一ではない生き方ができる。地域に守られ、育てられている」
 企業研修や教育旅行のツーリズム事業で、国内外から年約1万人を受け入れる。スタッフには高校生ら若者もいる。「多様な価値観を持った人と交流し、成長している。大槌はいい町になる。きっと」
 人を育てるのは、すぐそばにいる人ばかりじゃない。震災を機に生まれたつながり。町の外にも「地元民」はいる。(「適少社会」取材班)


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2016年01月25日月曜日


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