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<東北再生>覚悟曖昧な再稼働危険

[くろだ・まさひろ]1941年、金沢市生まれ。慶応大大学院修了。内閣府経済社会総合研究所長などを経て2008年6月から12年3月まで東北公益文科大学長。専門は経済学。

 東日本大震災の発生から間もなく5年の節目を迎える。災禍をはね返し、新しい東北を興そうと河北新報社が問うた提言に沿って、復興の現状と課題を河北新報東北再生委員に聞く。

◎再生委員に聞く/科学技術振興機構上席フェロー(元東北公益文科大学長)黒田昌裕氏(75)

<技術既に確立>
 この5年間を振り返ると、東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島の復興の遅れが一番気掛かりだ。
 科学技術振興機構は先日、原子力を専門とする科学者に向けてメッセージを発表した。原発事故で科学者に対する信頼が失われ、さらには信頼が失われたこと自体の風化も進んでいる。科学者は福島に対する責任を果たしているのだろうか。そんな思いを込めた。
 提言を策定する段階では「原発事故への評価が定まっていない」として福島再生への論及を避けた。
 原子力規制委員会は原発の再稼働に厳格な基準を設定したが、これでもう安全だとは言っていない。原子力による発電を続けるかどうかを決めるのは国民自身。だが、その判断材料となる情報が国民に伝わっていない。曖昧な覚悟のまま、なし崩し的に再稼働へ向かう現状は非常に危険だ。
 福島を考えることは、再生可能エネルギーの未来を考えることでもある。今後、この点を深掘りしてほしい。
 エネルギーを効率的に使う「スマートシティー」は、イメージ自体がこの5年間で飛躍的に進化した。
 鍵を握る蓄電池の性能は、日本が得意とするナノ技術による素材開発で大きく向上。省エネや再生エネ利用にとどまらず、環境保全や医療システムを組み入れた文字通りスマート(賢い)なまちを実現する技術が既に確立されている。
 ただ、被災地の復興まちづくりは遅れている。意欲的に先進技術を採用し、スマートシティーの先進モデルを実現してほしい。

<3要素不可欠>
 提言は被災地に限定せず、東北全体で再生構想を練ることの重要性を確認している。この原点にもう一度立ち返りたい。と同時に地方再生には、資金、アイデア、人材の3要素が不可欠であると心得たい。
 人口減少に悩む秋田では、一方で地元金融機関による地域の再生エネ開発への積極投資が始まっている。ベンチャーキャピタル(ベンチャー企業向けの投資機関)に近い役割を金融機関が担っているのだ。
 例えば米シリコンバレーには、3要素が好循環を起こす社会システムが確立されている。ベンチャーは失敗するのが当たり前という考え方に基づき、失敗を次に生かす人材や企業なら投資しようというのが本物のベンチャーキャピタルだ。
 日本の金融機関はまだまだリスクに及び腰。秋田のように東北の金融機関には、震災復興の過程で興る新産業に共感できる投資機関であってほしい。


2016年01月31日日曜日


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