岩手のニュース

<三陸沿岸道>学ぶ防災ツアーに期待

震災学習ツアーに参加した五十島さん(右)。三陸沿岸道路整備による観光客増加に期待が高まる=1月30日、宮古市田老

 国の復興道路「三陸沿岸道路」(仙台−八戸、総延長359キロ)の整備が進んでいる。昨年末までの開通率は43%。2018年度には60%を超える見通しだ。全通すれば仙台−八戸は約5時間で結ばれる。岩手県内は全線無料で、物流や観光の拠点を目指す流れが加速する。沿岸を縫い北へ。岩手復興を開く大動脈をめぐる動きを追う。(盛岡総局・山形聡子)

◎岩手復興 大動脈北へ(1)観光誘客

<行動範囲が拡大>
 津波で一部が破壊された巨大防潮堤の上に立った。海側では漁協施設の復旧が進む。高台には真新しい災害公営住宅が見える。
 震災で181人が亡くなった宮古市田老。富山県職員の五十島恵子さん(45)は1月30日、宮古観光文化交流協会の震災学習ツアー「学ぶ防災」に参加した。
 前日夜、富山で仙台行きの高速バスに乗り込んだ。東北新幹線で八戸に向かい、JRと三陸鉄道を乗り継いで田老に着いた。
 「半日かかるのは分かっていたので苦にはならなかったが、仙台と三陸沿岸が高速道路で直結すれば本当に便利ですね」
 ガイドの沢口強さん(36)が「私はすぐ高台に逃げて助かったが、防潮堤そばに住んでいた知人が犠牲になった。田老で見たこと、聞いたことを多くの人に伝えて」と語り掛けた。
 五十島さんは「地元の人から被災体験を聞くのは初めて。土木関係の仕事をしているので、防災に役立てることができる」と熱心に聴き入った。
 三陸沿岸道路が全通すれば、仙台−宮古は約3時間。現在の約5時間が大幅に短縮される。同協会の山口惣一事務局長は「高速道がつながれば観光客の行動範囲は広がる。『学ぶ防災』の利用者も一気に増えてほしい」と期待を込める。

<「通過点」恐れる>
 防潮堤や高台住宅などインフラ整備が進む岩手沿岸。対照的に観光の復興は足踏み状態が続く。
 県全体の観光客入り込み数は14年度、約2919万人。震災前09年度の約9割まで回復した。被災した沿岸12市町村に限ると14年度は約641万人で、09年度の約7割にとどまる。
 大動脈誕生への期待の陰には不安もある。移動時間の短縮で沿岸の各都市が単なる「通過点」になりはしないかという恐れだ。
 大船渡市で昨年11月、三陸沿岸道路の三陸−吉浜インターチェンジ(IC)間の吉浜道路(3.6キロ)が開通した。南の陸前高田ICから北の吉浜ICまで28.7キロがつながった。
 開通前、沿岸道路の「終点」だった三陸IC近くの「道の駅さんりく」は利用客の通過を懸念する。産直品を販売する三陸町産直組合の古水たま副組合長は「春の観光シーズンに向け、商品の調達量が見通せない」と話す。
 観光客に立ち寄ってもらうには何が必要か。沿岸北部の久慈市と周辺3町村は、国の補助金を活用した新たな道の駅整備の検討を始めた。久慈市政策推進課の担当者は「せっかく道路がつながる。久慈地域に多くの観光客を誘導したい」と知恵を絞る。


2016年02月04日木曜日

先頭に戻る