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<検証地域経済>事業拡大へ支援期待

グループ化補助金で再建されたカネキ吉田商店の本社工場。売上高は震災前水準に戻った=宮城県南三陸町

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で、東北経済が大きな痛手を負ってから間もなく5年。被災地では企業の再建が進み、未来を担う人材が起業という形で芽を出しつつある。再生可能エネルギー分野への参入も相次ぐ。被災地の地域経済の現状と将来への萌芽(ほうが)を探る。

◎震災5年へ(上)資金確保

 宮城県南三陸町の水産加工会社、カネキ吉田商店はグループ化補助金に救われた。
 震災前、海藻などを加工する4工場が志津川湾近くなどにあった。このうち3工場が押し寄せた津波で流失してしまった。
 それでも2012年5月には本社工場を再建。13年度には計3工場体制とし、14年度の売上高は約22億円と震災前まで回復した。
 震災直後に原材料確保に奔走し、ほそぼそながら製造を続け、販路を絶やさなかった。そうした努力以上に、国などから受けた約2億7300万円に上る補助金が工場再建、社業再生につながった。
 吉田伸吾社長(57)は「早い段階で交付されたことが大きかった」と実感を込めて語る。

<過半数が苦戦>
 グループ化補助金は補助率が75%と高く、使途も広い。東北経済産業局が昨年実施した調査によると、補助金を活用した企業の44.8%が、売上高が震災前との比較で「増加」あるいは「変化なし」と回答した。
 ただ「5割以下」にとどまる30.8%を含め「減少」が55.2%に達した。売り上げ回復に苦戦する現実が浮き彫りになった。
 「新しい事業に取り組まないと生き残れない」。岩手県大船渡市で水産加工を手掛ける及川冷蔵の及川広章社長(59)は強調する。
 同社は4億円の補助を受け、津波で全壊した2工場を再建。震災前のサンマやサケといった原材料を冷凍する1次加工中心の業務を見直し、サンマの煮付けといった2次加工の割合を増やした。
 とはいえ、ことし5月期の売上高は震災前の8、9割にとどまる見込みだ。昨年はサンマの不漁で加工原料が不足し、魚価が高騰したのが痛かった。

<再建から復興>
 資金面の不安も募る。グループ化補助金で賄いきれなかった再建事業費約1億円には、岩手県の「中小企業高度化資金」を充てた。無利子で返済期間は20年、返済猶予期間は5年。2年後には返済を始めなければならない。
 新たな収益源となる事業が必要なことは分かっているが、手元に資金はなく、民間金融機関からの融資も厳しい。
 及川社長は「これ以上の公的な補助は難しいことは理解している。せめて政府系金融の融資枠の増加や利子の減免などがあれば助かる」と話す。
 グループ化補助金は被災企業の再建を強く後押しした。その先の経営発展に向け、どう誘導していくか。
 岩手大三陸復興推進機構(盛岡市)の柴田亮特任准教授(35)は「金融機関から資金を借り入れ、リスクを取りながら経営するのが本来の姿だ。補助金による再建から本格復興へ。新たな段階に来ている」と指摘する。(山口達也)

[グループ化補助金]東日本大震災で被災した中小企業グループの工場や設備の復旧費用について、国が50%、県が25%の計最大75%補助する制度。2015年9月まで15回の募集があり、被災3県のうち岩手は1322業者(補助額811億円)、宮城は3869業者(2414億円)、福島は3758業者(1178億円)が採択された。16年3月中旬に16回目の採択が行われる予定。


2016年02月10日水曜日


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