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<検証地域経済>収益・資本域外が主体

東電の送電網を使った売電計画に向けて除染作業が続く福島県富岡町の大石原地区=4日

◎震災5年へ(中)再生エネの針路

 東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県富岡町の大石原地区。東電の送電線の周囲で除染が進んでいた。
 「地元主体のメガソーラー(大規模太陽光発電施設)を除染後に造る。東電の送電線を使って東京に電力を売っていく」。町産業振興課の安藤崇係長が意気込む。町などが2015年7月に設立した富岡復興エナジーの事務局を務める。
 予定地は同地区と下千里地区の計40ヘクタールで、来年秋に出力2万キロワットで発電を始める。総事業費は約90億円。1キロワット時当たり32円で東電に売り、年間8億円の収益を見込む。
 安藤係長は「売電益は原発の交付金にかなわないかもしれない。だが、計画から発電まで能動的に携われる。やりがいが全然違う」と胸を張る。

<大手企業多く>
 12年7月に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が導入されて以降、東北では新たな発電施設の建設計画が相次いだ。
 資源エネルギー庁によると、発電容量(15年9月末)は太陽光の149万4000キロワットを筆頭に風力、水力、バイオマスを合わせ計169万6200キロワット。およそ原発2基分に相当する。
 だが、大半は商社や電機、不動産などの大手企業が占める。遊休地を有効活用できる半面、「発電で生み出される富の8割は域外に流出する」(環境系シンクタンク)との指摘もある。
 東北全体でみれば、富が中央へ向かう流れは原発事故前と大きく変わっていない。

<後発組の壁に>
 大手の相次ぐ進出は、後発となった地元資本の新規参入の道も狭めた。
 東北電力の太陽光発電の受け入れ可能量は14年に限界を突破。東北電は再生エネ事業者に無補償、無制限で発電抑制を要請できるようになった。
 後発組は事業計画が立てづらくなり、ある地方銀行の関係者は「資本力、人材、ノウハウ、スピードのどれをとっても大手に後れを取っている」と明かす。
 富岡復興エナジーが発電事業に乗り出せたのは、活用できる送電網や変電所が地域にあり、東電の受け入れ可能量に余裕があったことが大きい。
 その一方で既存の再生エネ事業者にとってFITは起死回生にもつながった。八戸市のNPO法人グリーンシティは06年、市民出資で風力発電に参入。毎年赤字が続いたが、制度の導入で息を吹き返した。
 富岡敏夫理事長(69)は「FITは再生エネを普及させる効果があったと同時に、大手が地方の送電線を占拠した罪の部分もある。資本に地域制限を設けるなど、新たな仕組みがなければ地域再生につながらない」と指摘する。(勅使河原奨治)

[固定価格買い取り制度(FIT)]太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスでつくった電気を、電力会社に固定価格で10〜20年買い取ることを義務付けた制度。再生可能エネルギーの普及を図る狙いで始まった。買い取り価格は政府が発電コストなどを勘案して毎年度決定し、国民が電気料金で負担する。


2016年02月11日木曜日

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