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<検証地域経済>付加価値生む人に厚く

藤本雅彦(ふじもと・まさひこ)東北大大学院経済学研究科博士課程修了。リクルートなどを経て、04年に同研究科助教授、07年教授。11年から地域イノベーション研究センター長。56歳。北海道出身。

 東日本大震災後、被災地で起業が盛んになった。東北大の藤本雅彦地域イノベーション研究センター長は「首都圏などから移り住んだ『移動起業家』が被災地の既存資源に付加価値を付けている」と評価。今後の支援については選択と集中の必要性を強調した。

◎企業家支援のあり方/東北大地域イノベーション研究センター長 藤本雅彦氏に聞く

 −被災地に起業家が集まったのはなぜか。
 「ボランティアや視察で被災地を見た人が東北にもともとあった農産物などの資源に触れ、その良さを評価し、付加価値を付けた。震災がなければ、仙台市以外の被災地にこうした移動起業家が入り込むことはなかった。新しい動きに触発され、地元の人も起業し始めた」
 「創業は2種類に分けられる。一つは参入障壁の低い飲食店のような家業。もう一つは東北の外にモノやサービスを販売し『外貨』を獲得する企業。飲食店の増加は良いことだがパイの奪い合いになり、経済へのインパクトは小さい。外貨を獲得できる企業は一部にとどまっている」

 −その背景は。
 「東北には起業家を育てる役割を担う大企業が少ない。浜松市にはヤマハやスズキなど人材を輩出する大手があり、経済活性化につながる起業が多い」
 「小さな会社が成長する過程では必ず人と組織の問題に直面する。大企業ではこれらのマネジメントをするノウハウが鍛えられる。震災後の東北に来た移動起業家の中には外資系コンサルタント経験者もいて、そういうスキルがあった」

 −行政などによる起業家支援の在り方は。
 「支援の制度や支援団体は十分すぎるほどある。ただ、支援の対象や内容はもっと吟味するべきだ。家業に支援を集中しても経済効果は小さい。新たな付加価値を生み出す人に手厚くする必要がある。内容も支援対象が求めることをうのみにするのではなく、本当に必要な支援を見抜いて提言してほしい」

 −資金供給を行う金融機関の役割も重要だ。
 「金融機関は従来、担保があるかないかで融資の審査をしていた。これからは通常の担保融資に通らなくても、成長性ある事業に対しては、ファンドを通じた出資などが増えてもいい」
 「資金供給先を発掘するには目利き力が必要。事業者の立場で市場の可能性、競合相手、課題を分析し、提案する能力を鍛えることが不可欠だ。企業の成長段階に合わせ、必要な専門家を結び付ける支援の窓口に金融機関はなれるはずだ」


2016年02月12日金曜日

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