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<検証地域経済>課題増加 解決に意義

お絵描きアプリを軸にした事業戦略について、社員と打ち合わせるプレイノベーションの菅家社長(左)=1日、郡山市

◎震災5年へ(下)高まる起業熱

 郡山市郊外にあるマンションの一室で、若者たちがパソコンに向き合う。
 東日本大震災後に起業した2社の共同オフィス。会社の一つ「プレイノベーション」は、スマートフォンやタブレット型端末でお絵描きや塗り絵をできるアプリの開発・運営を核に事業展開する。
 「震災がなければ福島で起業することはなかった。震災に人生を変えられた」。2013年に創業した菅家元志社長(28)は語る。
 郡山市出身で震災発生時は慶応大の4年生だった。大学入学前から起業を志していたが、覚悟が足りなかった。
 「震災を体験し、しっかり生きないといけないと思うようになった。震災後の福島の子育て環境を改善したかった」と地元で起業した理由を説明する。
 地方でも不便さは感じない。「東京だったら埋もれてしまうが、福島で子育てに特化したIT企業は注目される。小さな会社でも一流の専門家と仕事ができる」と逆手に取る。

<開業率 上位に>
 被災地の起業熱の高まりは統計が証明する。国の雇用保険事業年報によると、新たに誕生した事業所が全体に占める割合「開業率」の全国順位は、福島が震災前(10年度)の23位から震災後(11〜13年度)に4〜6位に上昇。宮城は10位から2位、岩手は45位から10〜36位となった。
 日本政策金融公庫東北ビジネスサポートプラザの藤井辰紀所長は「震災で解決すべき社会的課題が増えた。阪神大震災後に非営利活動法人が増えたのと同じ現象だ」と解説する。
 デイサービス施設を運営する一般社団法人りぷらす(石巻市)の橋本大吾代表(35)は震災時、埼玉県内の医療法人で理学療法士として勤務していた。
 茨城県鹿嶋市出身で東北には縁がなかったが、震災後に石巻市でリハビリ支援をしたのを機に、11年12月に移住。活動を継続するうち、理学療法士など専門家の空白地域の旧河北町で家に閉じこもりがちになった高齢者が亡くなるのを見て、起業を決意した。

<助成制度利用>
 国の復興支援型地域社会雇用創造事業など公的助成制度を利用。起業家支援に取り組む一般社団法人MAKOTO(マコト、仙台市)による組織運営、財務面でのアドバイスが役に立った。
 「関東には私のような専門家は多いが、ここにはいない。石巻の方がより意義のある活動ができる」と橋本代表は語る。
 マコトの竹井智宏代表は「震災直後は何ができるか分からないまま来た人が多い。最近は地域で生きるライフスタイルを模索する中で東北を選ぶ人もいる」と分析。被災地での起業熱を冷まさないため「東北ならではの魅力を発信し、人材を呼び寄せないといけない」と話す。(小木曽崇)

[復興支援型地域社会雇用創造事業]被災地で社会的課題を解決する企業と雇用を創出するため、内閣府が2011年度補正予算に計上。12年度に608人の起業家とその支援団体などに総額18億2200万円(起業家1人当たり約300万円)を助成した。


2016年02月12日金曜日

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