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<TPP>説明会一巡 生産者くすぶる不満

TPP対策などについて説明し、理解を求める本川農水事務次官(中央)ら=5日、大崎市

 環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受け、農林水産省が各県で開催した国内対策の説明会「農政新時代キャラバン」が、今月上旬で東北を一巡した。農水省は「対策を講じ生産と農家所得の双方を支える」と繰り返したが、生産者には不満と不安がくすぶったままだ。質疑は、政府による影響試算の妥当性や生産力維持の方策に集中した。

<「現場と差」>
 政府は昨年12月、TPPによる農林水産物生産額への影響は約1300億〜2100億円減にとどまると試算。特に影響がゼロとされたコメに対しては、各会場で質問が相次いだ。
 秋田市の農業委員は「消費量が落ち込む中、米価への影響を過小評価している」と指摘。宮城県北部地方振興事務所の担当者は、食料自給率39%(2014年度)が維持されるとの見通しに「自給率が変わらないとは、数字をいじっているとしか思えない。現場とのギャップを感じる」と発言した。
 農水省は「輸入が増える分は備蓄米として買い入れ、主食用米から隔離する」と根拠を挙げ、「需要減など構造変化はTPPとは別の課題。試算に反映させていない」などと説明した。
 減少額が最大625億円とされた牛肉など畜産の分野でも異論が出た。
 福島県畜産振興協会の担当者は「生産者の経営判断に想定以上の影響が出る」。青森県の養豚業界幹部は「差額関税制度を維持したと言うが、実態は異なる。低価格の部位が大量に安く入ってくればやっていけない」と訴えた。
 会場では赤字補填(ほてん)割合引き上げなどの対策が重点的に示されたが、久慈市の畜産農家は「全てを納得できる人はいない」と複雑な表情を浮かべた。

<負担増懸念>
 政府は農林水産物の輸出拡大を活性化の軸に据える。15年には過去最高の7452億円を記録。「20年に1兆円」の目標を前倒しで達成すると打ち出したが、秋田県酪農連盟の関係者は「輸出を農家の手取りに直結させるのは難しい。現状でもうまい具合にいっていない」と疑問視した。
 本川一善農水事務次官は「流通業者などに比べ農家はマージンが薄い実態があるのは事実だが、競争を生むことで確保に取り組む。ネガティブに捉えないでほしい」と理解を求めた。
 輸入品の安全性も懸念材料の一つ。山形会場では養豚業者が「成長促進剤などが使われた米国の安い農畜産物が入り込む心配がある。安全安心な飼育に取り組んできた東北の生産者を守ってほしい」と訴えた。
 稲作や畜産の規模拡大など競争力強化策をめぐっては、「70歳以上が多く、圃場整備をしようにも、さらなる負担を抱えられる状況でない」(秋田市の農家)、「価格高騰で子牛導入にも相当なコストがかかる。現状では雲をつかむような話だ」(栗原市の畜産農家)と嘆く声が上がった。


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2016年02月12日金曜日

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