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<検証地域農業>自立へ安定収益必要

作業の打ち合わせをする林ライスのメンバー。未体験の大規模農業と向き合い、後継者育成などの基盤づくりを急ぐ=岩沼市林地区

 震災から5年を迎える農業の現場は、平野部が急進的な変革にもまれる一方、三陸沿岸の条件不利地などは復旧すら道半ばだ。東京電力福島第1原発事故の影響は依然、農家を苦しめ続ける。地域ごとに直面する課題は複雑で、復興の針路をより難しくしている。

◎震災5年へ(上)規模拡大はしたけれど

 東松島市西矢本地区の株式会社「めぐいーと」は3シーズン目の今春、農地140ヘクタールにコメや大豆などの作付けを計画する。耕作規模は宮城県内トップクラスだ。
 「数年後には150ヘクタールを超えるだろう。一気に10年は時が進んだ感じだ」。社長の武田恵喜さん(61)が東日本大震災後の慌ただしい移ろいをかみしめる。
 西矢本地区にはかつて兼業農家など約200戸があった。津波は農機具や施設だけでなく、小規模農業の仕組みごと押し流した。被災地の農業復興は、2013年11月に6人が設立した同社にまとめて託された。
 地盤のかさ上げや除塩など復旧工事に加え、10アールを1ヘクタールに大区画化する圃場整備事業を実施。大型トラクターやコンバイン、乾燥調整施設などは復興交付金に基づく支援制度で市から無償貸与され、先進的な大規模営農の形は整った。

<多角化策探る>
 安定した収益基盤の構築はこれからだ。営農再開した14年は過去最低水準の米価下落に泣いた。5〜10年後には1台1000万円もする機械などの更新期が到来する。会社の持続には自前で巨額の資金を蓄えなければならない。
 副社長の土井芳伸さん(55)は「(乾いた田んぼに種もみを直接まく)乾田直播による効率化や機械維持など経費抑制に努め、いかに販売先を多角化するか。自立への取り組みを急がなければならない」と模索する。
 被災地では、5年前には想像もしなかった大規模営農が次々誕生した。劇的な構造変化に追い付こうと担い手たちがもがいている。
 津波で農地120ヘクタールががれきに覆われ、農機具や施設などが全て流された岩沼市林地区。13年2月に設立された農事組合法人「林ライス」が、手探りで地域営農の立て直しに挑む。
 圃場整備完了に伴い、今シーズンはコメの作付けが70ヘクタールに拡大する見通し。大豆や露地野菜などを含めれば90ヘクタール規模に達する。代表理事の田村善洋さん(65)は「コメだけで何とかできる時代でない。面積があれば稼げる状況でもない」と厳しい現状を明かす。

<後継者問題も>
 林地区も、個別営農で維持されていた30アール区画の田んぼが1ヘクタール規模に変貌。農機具や施設が市から無償貸与されたが、作り手は約10人の法人メンバーだけになった。
 法人は高収益作物で冬場の作業の幅を広げようと、キャベツの露地栽培など園芸分野に活路を見いだそうとしている。役員6人中5人が60代。後継者育成も見据えなければならない。
 「大きくなった営農の維持だけでなく、福利厚生など若手受け入れへの組織づくりも図る必要がある。ともに数年で答えを出さなければならない難題だ」。田村さんは気を引き締める。(元柏和幸)


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2016年02月13日土曜日

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