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<検証学びや>国の都合で現場混乱

仮設住宅の集会所で子どもたちの学習を手伝うロシナンテスのスタッフ=3日夜、宮城県亘理町

◎震災5年へ(上)細る教育支援

 「寺子屋」は東日本大震災で被災した子どもたちにとって、大切な学びやだった。それが3月いっぱいで閉鎖される。
 NPO法人ロシナンテス(北九州市)が2011年、名取市や宮城県亘理町の仮設住宅で開講。小中学生の学習支援を続けてきたが、4月以降の運営費を調達できるめどが立たなくなったという。

<自治体に移管>
 NPO法人による自主事業として始まった活動の仕組みはめまぐるしく変わってきた。
 12年度からは緊急スクールカウンセラー等派遣事業の一環として、国から直接委託を受けて運営。財政的に安定したものの、15年度には国が自治体に委託、自治体がさらにNPO法人に再委託する方式になった。
 そして4月以降の16年度は自治体が実施する事業に、国が補助する形に変更。これを受け、名取市と亘理町は「ニーズが減った」などを理由に、NPO法人による寺子屋事業を継続しないことを決めた。
 支援形式の変更理由について、文部科学省は「(15年度までの)集中復興期間が終わる段階になり、自治体の関与が薄いのは好ましくないと判断した」と説明するが、現場は混乱した。
 名取市は2月に入り、独自に寺子屋塾長の工藤博康さん(50)に補助して16年度も続ける方向で検討を開始。工藤さんは「仮設住宅がある間は続けるべきだと思っていた」と胸をなで下ろすが、市教委の担当者は「国の動向に現場が振り回されている」と率直だ。
 震災から6年目となる16年度、被災児童生徒に対する国の支援は縮小する。文部科学予算の復興関連分は15年度の約2195億円から約620億円に激減。被災校の耐震化事業(約1400億円)を一般会計に付け替えた点が大きいが、大学進学者への奨学金貸与や授業料減免など廃止、減額となった事業も目立つ。

<需要まだ多い>
 緊急スクールカウンセラー等派遣事業のように、仕組みの変更で実質的に縮小・廃止に至る例もある。宮城県内では昨年、同事業枠で被災地の公立小中高校の授業補助などで派遣された学校支援員が、国の予算減額を理由に半年で雇用を打ち切られるケースが出た。
 宮城県教委の担当者は「16年度から事業をどう進めるかの要綱が国から示されていない」と困惑する。県は16年度当初予算案に事業費見込み分約14億円を計上したが「実際の補助額は分からない」と言う。
 被災地で教育支援を続ける民間8団体が仙台市で11日に開いたシンポジウムでは、団体側から「1200人を支援したが、その10倍以上から支援要請がある。ニーズはまだ多い」「単発の助成や補助ではない長期的な仕組みが必要だ」といった指摘が相次いだ。
 学習支援に対する国の別の補助も16年度は大幅減となり、対象は限定される。事業主体の一つの宮城教育大で実行委員を務めた山口哲男日専連理事長(仙台市)は「国の都合ではしごを外されたと感じる。子どもたちの10年、20年後までを見通し、支えていくのが役割でないのか」と疑問を投げ掛ける。(若林雅人)

 被災地の学びやは少しずつ落ち着きを取り戻している。一方で教育支援は細りつつあり、予算減額や事業縮小に翻弄(ほんろう)される現場がある。子どもたちをどう支え、成長に導くのか。教訓を踏まえた防災、復興教育の模索も始まった。


2016年02月20日土曜日


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