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<適少社会>融和模索する「新住民」

名勝・天神岬の近くにある前田建設工業の作業員宿舎。最大時で1000人、現在は400人が暮らす=福島県楢葉町

◎人口減 復興のかたち[10]第2部急減地(4)無人の町再生(楢葉)

 福島第1原発事故は、避難区域がある福島県の自治体人口を破壊した。楢葉町は2015年9月、全域避難した県内7町村で初めて、避難指示が解かれた。15年国勢調査の人口は976。前回10年の7700から87.3%の減となった。
 帰町者はさらに少ない。15年末現在、住民登録する7376人のうち、町内居住は262人で4%を切る。4日以上の滞在者に範囲を広げても、16年1月現在で421人にとどまる。
 「7700が400に減ったのではない。ゼロが400になったとみるべきだ」。松本幸英町長(55)はプラス思考を貫き、生活環境の再生に取り組む。
 帰町率の目標は期待を込めて5割に置く。「願いは町民の生活再建。幸せに自立できれば、楢葉でもいわきでも郡山でもいい」。戻ってほしいが、戻れとは言えない。苦境が透ける。

 空前の人口減をどう乗り越えるか。町の復興計画は施策の一つに「復興に伴う新規流入人口の受け入れ」をうたう。町の周辺では原発廃炉や復興に数万人規模の作業員が携わる。
 住居が整備されれば数千人の街はすぐできる。前田建設工業環境省復興関連工事統括所長の原稔さん(49)はそう請け合う。12年夏から町に事務所を構え、除染などに当たってきた。
 廃炉作業は数十年は続く。居住を望む人は相当いるという。雇用が生まれ、教育や医療も充実する。好循環が起きる。「われわれのお金が地域に落ちる仕組みを早くつくってほしい」
 だが、作業員と地域の共生は簡単ではない。「なんか怖い」。先入観やレッテル張りに、作業員絡みの事件が拍車を掛ける。帰町を見合わす理由に作業員の存在を挙げる町民もいる。
 町民の警戒感は原さんも重々承知する。「地域活動に積極的に協力して信頼を築きたい。今は住民が少なく機会はほとんどないが、思いは伝え続ける」。「新住民」は融和を模索する。

 帰町する、しないは個々が決める問題。理由もそれぞれ違っていい。「町民間に分断が起きてはならない」。楢葉出身で町の復興を支援する団体「ナラノハ」代表の佐藤努さん(37)は指摘する。
 立場の差異を認め、輪をつくり支え合う。その足掛かりにと、町外にある仮設住宅と楢葉をつなぐイベントの開催や、郷土料理、舞踊の創出に取り組む。
 佐藤さんは昨夏、避難先のいわき市に家を建て「移住した」。妻、3人の子と暮らす。それでも古里の復興に尽くす。いつか分からないが、将来戻る時、住みやすい町であってほしいと願う。
 「楢葉に思いがあれば、離れても、まちづくりに関われると示したい」。今すぐ戻れない人と町の連携をどう維持するか。試金石になると感じている。


2016年02月20日土曜日

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