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円形建築「貴重な遺産」庁舎保存求め要望書

建築の専門家などから保存を望む声が出ている円形建築の大崎市田尻総合支所

 老朽化した大崎市田尻総合支所(宮城県大崎市田尻)の建て替えをめぐり、日本建築学会東北支部(源栄正人支部長)が市に庁舎保存の要望書を提出した。庁舎は1950年代に流行した円形建築。学会支部は「貴重な建築遺産であり、地域のシンボル。何とか保存活用してほしい」と訴えるが、市は財政面から慎重姿勢だ。
 58年に旧田尻町役場として建てられた庁舎は鉄筋コンクリート2階で、延べ床面積804平方メートル。今月7日に要望書を提出した仙台高専建築デザイン学科の相模誓雄准教授は「円形建築の役場庁舎としては、全国で唯一の現存例ではないか」と指摘する。
 庁舎は東日本大震災で、壁に亀裂が入る被害を受けた。市は2013年に老朽化した市本庁舎、鳴子総合支所とともに田尻総合支所についても建て替えの方針を打ち出した。
 計画では、田尻総合支所の新庁舎は、円形庁舎を取り壊した跡地に建設。大崎産材を使った木造平屋で、床面積は1000平方メートル以下。渡り鳥の楽園である蕪栗沼観光の拠点にする。
 事業費は5億4000万円を見込む。2016年度予算に基本・実施設計などの費用を計上。16年度に設計を終え、17年度に建設着手、18年度の完成を目指す。田尻総合支所によると、地区の行政区長会やまちづくり協議会は市の方針に同意しているという。
 一方、庁舎保存を求める同市田尻の工務店社長江村克志さん(59)は「庁舎に愛着があり、取り壊しに反対する住民も少なくない。文化財登録を見据え、保存活用する方策を考えたい」と訴える。相模准教授と江村さんらは庁舎活用案として、ホテルやギャラリー、貸しオフィスやFM局などへの改装を提案している。
 市は中心市街地再開発の大事業を抱え、財政的な余裕がない。田尻総合支所の千葉嘉一支所長は「地域が保存を望むなら柔軟に対応する」とするものの、「財源を無視した議論はできない」とのスタンスだ。

[円形建築] 建築家の坂本鹿名夫(1911〜87年)が提唱した現代建築。中央部にらせん階段を配した円筒形の建物は、採光と通風に優れ、廊下や壁が最小限で済み建設費が抑えられた。半面、建て増しが困難で、家具類の配置も難しく、60年代後半にはほとんど新築されなくなった。坂本は円形校舎だけで100棟以上の設計に携わったとされる。うち30棟ほどが現存し、三重県朝日町の朝日小校舎は国の有形文化財に登録されている。


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2016年02月22日月曜日


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