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<検証地域医療>繁忙でも経営苦しく

大槌病院の仮設診療所。狭い診察室で坂下院長が問診する=岩手県大槌町

 震災と東京電力福島第1原発事故の影響で、被災地では医療資源の確保に苦心する状況が続く。特有の医療ニーズも生じ、新たな対応が求められている。

◎震災5年へ(上)続く仮設診療

 岩手県では、東日本大震災で被災した高田(陸前高田市)、大槌(大槌町)、山田(山田町)の3県立病院が今も仮設施設での診療を続ける。5月に開院する大槌を皮切りに再建が進むが、震災前から続く深刻な医師不足と震災後の急速な人口流出という難題が立ちはだかる。
 プレハブの大槌病院の仮設診療所。廊下に外来患者がぎっしり並ぶ。常勤医は内科と外科の計5人だけ。応援医師による週1回の眼科や整形外科の診察日は患者がさらに増える。
 外科の坂下伸夫院長は「高齢化で整形外科の需要は高いが、新患を受け付ける余裕はほとんどない。湿布や飲み薬の処方で済む患者は外科の自分が診る」と現状を説明する。

<14年度は赤字>
 新病院は常勤医が足りず、震災前は対応した休日と夜間の救急患者の受け入れを断念した。病床も10少ない50とし、休診中の産婦人科などを廃止して8科から6科に絞る。病床復活で必要となる当直は、岩手医大(盛岡市)や周辺の開業医の応援でしのぐ予定だ。
 ただ、加速する人口減少は病院経営を圧迫する。町人口は2015年の国勢調査(速報値)で1万1732。前回10年より3544人(23.2%)減った。1日の外来患者数は、10年度の150人から15年度は84人へとほぼ半減した。
 大槌病院は14年度決算の経常損益で約7600万円の赤字だった。再建後は病床の稼働で収入増を見込むが、増員する看護師の人件費など経費もかさみ、赤字が続く見通しだ。
 それでも、入院機能の回復は医療圏にとって大きな意味を持つ。急性期を過ぎた患者や経過観察の必要な高齢者の引き受けが可能になる。そうなれば、大半を受け入れている県立釜石病院(釜石市)の負担を減らせるからだ。
 坂下院長は「町内の開業医も近場に入転院の受け皿ができて安心するはず。急性期の対応は釜石病院に任せる役割分担で地域医療を支えたい」と展望を描く。

<ストレス訴え>
 被災地では心のケアの重要性も増している。仮設住宅暮らしの長期化などに伴うストレスから体調を崩し、片頭痛や腹痛といった症状が現れる被災者は多い。
 県医師会が11年8月に陸前高田市に開設した高田診療所。日本心療内科学会の協力で設けた心療内科を訪れる患者は後を絶たない。県内外の医師による週末だけの診察だが、15年は延べ約600人が受診した。
 県医師会は「役目を終えた」として3月で診療所を閉鎖する。心療内科は県立高田病院が引き継ぐ。田畑潔院長は「精神的にダメージを受けている被災者は多く、公立病院としてニーズに応えなければならない」と態勢整備を急ぐ。(東野滋、太楽裕克)


2016年02月22日月曜日

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