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<原発事故>断念 理容室「帰還信じられぬ」

あの日を境に閉めた理容店。地震で建物がゆがみ、ドアが半開きになっている=1月22日、福島県浪江町

 福島県浪江町は東京電力福島第1原発事故で全町避難を余儀なくされ、双葉郡随一の規模を誇った商店街も崩壊した。古里を追われた商店主らを訪ねた。

 愛用のはさみとくしは持ち出した。ただ、避難先で店を再開する気力は湧かなかった。
 浪江町の商店街で「モンマ理容室」を営んでいた門馬光男さん(74)は、長男夫婦や孫が住む会津若松市の借り上げアパートに身を寄せる。
 横浜市で修行を終えた45年前に店を構えた。「裕福じゃなくても納得できる生活だった。それが突然、プツンと切られるなんて」。やりきれなさが募る。
 昨年8月、福島市であった葬式の会場で、時計店を営んでいた同級生の男性と再会した。「店はどうすんだ?」。門馬さんが尋ねると、男性は「俺らみたいな個人事業主は信用が第一。避難先で一朝一夕で築けるもんじゃねえ」と力なく答えた。「俺もだ」。うなずくしかなかった。
 来年春の避難指示解除を視野に、町はことし10月、役場敷地に仮設商業施設を整備する。門馬さんの下にも出店の意向を確認するアンケートが送られてきたが、「希望しない」に丸を付けた。
 町には以前、約2万1000人が住んでいた。町が昨年実施した意向調査で帰還を希望した住民は17.8%。「町は約5000人が戻ると言うが、信じられない。お祭りに屋台を出すのとは違う」
 最近、グラウンドゴルフを始めた。新たな友人もでき、ぽっかり空いた心の穴を埋めてくれた。「ずっと部屋にこもっていたから、思い切って参加してよかった」。難しいことを考えるのは、少し疲れた。


2016年02月22日月曜日

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