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津波被災の旧女川交番保存を 元警察官が寄付

旧女川交番の前に立ち、震災当時の様子を語る松田さん=24日午後3時10分ごろ、宮城県女川町

 東日本大震災の遺構として保存される宮城県女川町の旧女川交番をめぐり、震災当時勤務していた同県警の元警察官松田博さん(64)=宮城県美里町=が24日、町に5万円を寄付した。津波で変わり果てた町で遺体の捜索や収容に当たった松田さん。震災から5年を前に「微力ながら寄付を交番の保存に役立ててもらい、津波の威力や命の大切さを伝えてほしい」と願う。
 松田さんは町役場仮設庁舎で須田善明町長に寄付金を手渡した後、1本の鍵を見せた。「交番で使っていた机の鍵。お守り代わりに持っています」
 須田町長は「交番は復興の原点。絶望的な状況から再起するメッセージを伝えたい」と述べた。
 町中心部にあった交番で巨大地震に見舞われた松田さんはパトカーに乗り、町内を巡回した。女川港付近を走行中、助手席の同僚が叫んだ。「津波が来た!」。ルームミラーを見ると、200メートルほど後ろに黒い津波が迫っていた。
 高台へ逃げて難を逃れたが、鉄筋コンクリート2階の交番は横倒しになった。
 交番勤務を始めて約1年。近隣の商店主や親交のあった夫婦らが犠牲となった。警察官として老若男女の遺体と対面し、亡きがらを引き取りに来た遺族らに接した。「胸が締め付けられた」と目を赤くする。
 河北署交通課を経て2012年3月、約40年間の警察官人生に幕を下ろした。再就職後も女川町へ足が向かなかった。震災当時の映像を見るたび、つらい記憶を思い出して涙が出た。
 交番について町は13年11月、遺構として保存する方針を表明。県震災遺構有識者会議は津波で横倒しになった点を「希少な事例」と評価した。
 「できるだけ長く交番を残し、多くの人に見てほしい」。松田さんはことし1月に女川町を再訪し、町に寄付の意向を伝えた。
 町内は復興まちづくりが進み、中心部に新しいJR女川駅や商店街が並ぶ。松田さんは「今後は町に足を運んで復興の状況を見て、親しかった方々を慰霊したい」と語る。


2016年02月25日木曜日

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