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<検証水産業>人材確保へ対策次々

水産加工会社で働き始めたベトナム人実習生(右)。特区認定の1期生だ=20日、塩釜市新浜町

◎震災5年へ(下)加工

 東日本大震災後の水産加工場で、人手不足が深刻の度を増している。求人を出しても応募がない。だからといって、賃金は高くできない。慢性的に働き手が足りない。
 そんな状況を打破しようと、宮城、岩手両県は外国人技能実習生の受け入れ枠を拡大する構造改革特区を共同申請し、昨年、塩釜市の4社と釜石市の1社が認定を受けた。

<実習生枠倍に>
 宮城県塩釜市では15日、「特区1期生」のベトナム人実習生が配属された。4社に3人ずつ、計12人が練り製品などの工場で働く。
 「人手不足解消という点で大変ありがたい。水産加工業は労働環境が過酷な3K職場と言われ、どこも人集めには苦労しているから」。実習生を事業所に派遣する監理団体、塩釜魚市場水産加工業協同組合の内海勝男組合長(76)は特区の意義を語る。
 認定された会社は、これまで年間3人だった受け入れ枠が6人に増え、3年間の実習期間で最大18人の受け入れが可能になる。
 塩釜公共職業安定所によると、管内の昨年12月の有効求人倍率は1.02倍で33カ月(2年9カ月)ぶりに1倍を超えた。ある水産加工業者は「他業種と競争になっても、経営が圧迫されて賃金を上げられない」と言う。特区に期待する声は少なくない。
 ただし、来日する外国人はあくまで実習生だ。3年たてば帰国するため、業者が求める熟練の社員にはなれない。市水産振興課の担当者は「現時点で特区効果は、業界全体から見ると限定的だ」と受け止める。
 他にも対策は打たれた。宮城、岩手両県は本年度、水産加工業の人材確保の支援策として、社員の宿舎整備の補助制度を始めた。
 岩手県では昨年12月末時点で、陸前高田市や大船渡市などで計5件の利用があった。家賃も補助しており、釜石市で2件申請された。補助金交付は計約3000万円。それでも、利用は予算額約1億円の3分の1に達していない。
 県は2016年度当初予算案で約5500万円を計上し、制度を続ける。県復興局産業再生課は「水産加工業は岩手沿岸の基幹産業。人材確保に向けて積極的に活用してほしい」と呼び掛ける。

<3K職場改善>
 宮城県気仙沼市では、水産加工場の建設ラッシュが続く。本年度中に9工場が完成し、さらに春まで8工場の稼働が見込まれる。
 気仙沼公共職業安定所が力を入れるのは、求職者向けの職場見学会や説明会だ。昨年12月には畠和水産(気仙沼市)の新食品工場で見学会があり、参加した6人のうち男性1人の採用にこぎつけた。
 新工場は重労働にならないよう、機械を使って箱詰めやかご洗いができる設備を導入。清潔で広い食堂休憩室も備える。
 家本美千代常務(52)は「3Kのイメージが強い業界だが、今だからこそ変わらなければならない」と新工場をアピールし、見学会への参加を促す。「人手不足で注文を取れず、チャンスを逃す同業者が多い。人も仕事も増やしたい」と、これからを見据える。(山野公寛、中村紳哉、高橋鉄男)


2016年02月25日木曜日

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