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<検証福島の海>厳格検査も食卓遠く

放射性物質濃度を調べるため、検査施設に持ち込まれた魚=17日、いわき市の小名浜魚市場

◎震災5年へ(中)風評の壁     

 安全安心は膨大な検査作業の先にある。手間を惜しんではいられない。
 試験操業が行われた17日、いわき市の小名浜魚市場に、各浜の水揚げが集まってきた。マガレイ、マダラ、アンコウ。出荷に向けて漁協職員らが選別、計量に追われながら、魚種ごとに必要な数を小さなバケツへと入れる。放射性物質検査のサンプルだ。
 市場内の専用施設でミンチ状や切り身に処理し、9台の検査機にかける。結果が出るまで約30分。導入したばかりの新型機なら最短約3分で終わる。この過程をクリアしなければ、魚が出回ることはない。
 「どの船が、何時に、どこで捕ったかを特定した上で検査する。安全性の確認は福島の漁業再興の生命線だ」。いわき市漁協の担当者が口調を強めた。

<回復進展示す>
 法定の放射性セシウム濃度の基準値は1キログラム当たり100ベクレル。福島県漁連は独自に50ベクレルと定めている。検査体制を整え厳格に基準を運用していても、東京電力福島第1原発事故がもたらした風評被害は収まらない。
 消費者庁の調査では、2割近くの市民が福島の産品の購入をためらっている。いわき仲買組合の遠藤浩光組合長(56)は「原発事故という事実は風化しても、フクシマというイメージは風化しない」と嘆く。
 各種の数値を見る限り、福島の海洋環境は着実に回復している。
 福島県水産試験場の調査では、2011年に法定基準を超えた検体は4割近く。翌年から急減し、15年には全体の0.1%を割り込んだ。9割近くは検出限界値にも届いていない。
 全量検査して出荷すれば、一定の信頼回復が見込める。しかし、処理過程で鮮度が落ちれば、商品価値そのものが失われかねない。
 「コメのように袋ごと検査するわけにはいかない。魚介類特有の難しさがあるんです」。試験場の藤田恒雄漁場環境部長(56)が苦り切った表情を見せた。

<直接消費者に>
 消費者になかなか届かない安全安心のメッセージ。浜では、食卓に直接アプローチする取り組みも進む。
 相馬市の漁業者でつくる産直研究会は1月、カレイの一夜干しづくりを始めた。原発事故で休止に追い込まれ、ことしは再開2年目。300匹をセット販売する計画だ。
 顔の見える関係で消費回復を図る狙いだが、限界もある。試験操業の水揚げは港ごとに一括して取引される。自分の魚だけを仕入れることはできない。
 「以前は自分の魚箱を競り落とせばよかった。『俺の魚だ』と胸を張れれば、訴求力も高まるのだが…」。研究会の市田良夫会長(57)が唇をかんだ。


2016年02月27日土曜日

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