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<検証福島の海>風評・漁業停滞も響く

相馬市が建設した磯部水産加工施設。関係者が建屋の完成を祝った

◎震災5年へ(下)オカの足踏み

 出荷スペース手前に放射性物質の検査機器を設置した。天井には紫外線による殺菌装置が備わる。壁には大きなガラス窓。見学者らが工程を確認できるよう配慮した。
 相馬市が2月に完成させた磯部水産加工施設。地元の被災企業などでつくる協同組合が運営主体となり、3月から本格稼働する計画になっている。
 「ようやくここまでたどり着いた」。組合理事長の島寿雄さん(49)が声を振り絞る。水産加工を営んでいたが、東日本大震災の津波で設備や車を失った。地元漁協とも連携し、市に生産拠点の再建を働き掛けてきた。
 新施設の加工能力は年約400トン。原料供給の代わりに、利益の一部は船主に還元する。操業意欲を喚起する工夫の一つだ。「漁師、業者がともに再生することが地域への恩返しになる」。島さんが力を込めた。

<岩手・宮城と差>
 東北の水産加工業の多くは、津波による設備被害と販路喪失にあえぐ。福島の業者には、さらに東京電力福島第1原発事故が重くのしかかる。風評被害、漁業停滞という悪条件とも向き合わねばならない。
 水産庁が2月にまとめたアンケートでも苦境ぶりが分かる。岩手の業者の60%、宮城の69%が「生産能力が8割以上回復」と回答したのに対し、福島は30%止まり。売り上げの復調ぶりも2県に大きく後れを取っている。
 全国水産加工業協同組合連合会は「福島の業者は生産計画が立てられず、設備投資にも影響が出ている」と指摘する。

<隣県で仕入れ>
 水産関連では、鮮魚、活魚を扱ってきた業者のダメージも深い。加工品より利幅が大きい半面、生鮮食品に向けられる消費者の目はいっそう厳しい。
 小名浜水産加工業協同組合(いわき市)の小野利仁組合長(59)は「生鮮を扱う組合員は隣県まで仕入れに行くなど苦労している。顧客をつなぎ留めるのに必死だ」と話す。売り上げベースで加工が6〜7割まで戻ったのに対し、生鮮は2〜3割の回復にとどまっているという。
 福島では試験操業が行われているものの、水揚げはわずかな量に限られる。漁師だけが奮闘しても局面打開は難しい。消費者との橋渡し役となる水産業者の再生なしに、漁業復興はなしえない。
 相馬市では現在、漁業者、商工業者が海産物のブランド化を模索する。旗振り役となる新妻良一相馬商工会議所会頭(78)は「捕って終わり、市場に運んで終わりの時代ではない。小売りを交え、一体となって商品開発を進めなければならない」と強調した。


2016年02月28日日曜日

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