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<十和田湖遊覧船>労使に不信感 経営沈む

アルパカを遊覧船利用客にアピールする日向氏(左)=2015年4月、十和田市の子ノ口地区

 十和田湖で遊覧船を運航する2社のうち、2年前に参入したばかりの十和田湖遊覧船企業組合(青森県十和田市)が2月中旬、事業を廃止した。湖面を優雅に進む船とは対照的に、労使が互いに不信感を募らせ、経営は崩壊。東日本大震災以降の観光不振が騒動を招いたとの指摘もある。(八戸支局・岩崎泰之)

<「名前を出すな」>
 「謎のスポンサー」。企業組合が2014年8月に運航を始めた当初、行政や観光関係者の間でこんな言葉が飛び交った。組合は経営破綻した青森市の運航会社の元従業員を引き取る形で事業をスタート。実質オーナー日向義孝理事長代行(64)は設立時、ベテラン従業員を代表理事に据えた。
 許認可手続きを円滑に進めるためとみられ、運航開始後は日向氏の知人女性がトップに就き、同氏の存在が浮かび上がった。
 「名前を外部に出すなと言っていた。運航の現金が入り始めるとトップを替えて一気に実権を握った」と従業員は振り返る。
 日向氏は八戸市に事務所を構え公衆浴場事業などを展開。ある経済関係者は「会社をいくつも興し法律にも詳しい人物」と言う。
 シーズン開幕直後の15年4月下旬、日向氏は十和田湖にアルパカ10頭を引き連れて登場。取材に対し「遊覧船参入は従業員救済のため。アルパカはテレビで見て思いついた」と説明し、観光牧場整備や小型船による効率化の構想も語った。
 この時点で組合内部では労使が対立。旅行会社への営業活動を認めないなど、従業員は不可解な経営に不信感を募らせていた。
 ある従業員は聞こえるような声で「アルパカなんて誰が面倒見るんだ。何を考えているのか…」と批判。日向氏は「ここの従業員は頭が固い。任せきりだと倒産するから自分が表に出た」と返すありさまだった。
 結果的に牧場構想は実現せず小型船も就航しなかった。日向氏が盛岡市の公衆浴場事業で失敗したこともあり、賃金遅配が頻発。ひそかに進めた組合の売却話は立ち消えになった。
 従業員らは先月、提訴の方針を決めたが、請求は昨夏に代表理事に就任した大阪市の男性に対してしかできず「所在も素性も分からない相手」といぶかる。

<船の扱い不透明>
 既に組合事務所は空っぽで、大型船など計5隻の扱いは不透明だ。日向氏は「船は債権者が差し押さえればいい」「僕は顧問。経営者は別」と主張。破産手続きにも否定的で、船は湖に放置される恐れもある。
 10年前には30万人以上いた十和田湖遊覧船の利用客は、震災以降10万人前半まで落ち込んだ。「乙女の像」がある休屋地区には廃業した旅館や商店が並ぶ。
 同地区でホテルを経営し十和田湖国立公園協会理事長を務める中村秀行さん(60)は今回の問題を「もうけだけが目的の事業者が入り込む隙があった。十和田湖観光が落ち込み地元はどこも体力がなく、防げなかった」と分析する。その上で「ことしは十和田湖の国立公園指定80周年。残る1社の遊覧船と共に観光を盛り上げたい」と話す。


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2016年03月02日水曜日


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