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<安住の地どこに>望郷とのはざまで苦悩

内陸避難者を対象とした県の個別相談会=2月3日、盛岡市内丸

 東日本大震災から5年の節目を前に、岩手県は内陸避難者向けの災害公営住宅を整備する方針を決めた。2018年度入居開始を目標に、建設地と戸数を検討する。内陸での定住か、沿岸の古里への帰還か。避難者は葛藤しながら安住の地を定め始めた。(盛岡総局・横山勲)

◎岩手・内陸避難者の選択(上)定住志向

<厳しい自宅再建>
 「この先は安いアパートに引っ越すしかないと諦めていた。ほっとしたよ」
 県が2月3〜9日に盛岡、北上、遠野、一関4市で開催した内陸災害公営住宅の個別相談会。盛岡会場に足を運んだ大槌町出身の佐々木芳雄さん(79)は入居を心待ちにする。
 震災直後から盛岡市のみなし仮設住宅のアパートで妻(75)と年金暮らし。津波で流された大槌の自宅を再建する金銭的な余裕はない。「復興途上の大槌では買い物や病院通いが難しい」と盛岡での定住を望む。
 盛岡には親戚も知り合いもいないが、「同じ境遇の人が集まって暮らせれば、さみしさも和らぐと思う」と打ち明ける。
 県が昨年夏に行った調査では、いま住む場所での定住を希望する避難者は53.1%に上った。定住志向の高まりは、被災者が望郷と実生活のはざまで悩んだ末の選択だ。
 県が想定する内陸災害公営住宅の入居対象者は、みなし仮設や親戚宅に避難した被災者。沿岸自治体にとっては人口流出につながるため、これまでの意向調査で帰還の意思を示していないなど新たな入居条件を設ける。
 これに通常の県営住宅と同じ所得要件が加わる。実際に入居できるのは、年金暮らしの高齢世帯や病気などで就職が難しい低所得の「被災弱者」に限られる。
 県住宅課の辻村俊彦課長は「沿岸部は賃貸住宅が少なく、避難者の帰還は一戸建て再建か災害公営住宅への入居しか選択肢がない。家賃の高い内陸は定住するにも、経済力がないと行き場を失う」と説明する。

<夫婦で帰還決意>
 県内の内陸避難者は1月末現在、1573人。その半数が暮らすみなし仮設は、沿岸の災害公営住宅の整備完了に合わせ終了する見通しだ。順調に建設が進めば2〜3年後。多くの避難者が、ついのすみかを定める岐路に立つ。
 釜石市から親戚を頼って盛岡市に避難した富沢忠志さん(75)は昨年暮れ、苦悩の末に釜石の災害公営住宅への入居を決めた。
 みなし仮設で同居の妻(69)は腎臓病で週3回の人工透析が欠かせない。病院の多い内陸での定住に傾いた時もあったが、互いに望郷の念が募った。
 「心にわだかまりを抱えていたままでは後悔する。帰郷に苦労は多いかもしれないが、夫婦で支え合って暮らしていけばいいさ」
 震災から5年。富沢さんは決意を胸に歩き始める。


2016年03月03日木曜日


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