岩手のニュース

<安住の地どこに>孤立と不安 問われる支援

互いに励まし合い明るさを取り戻した大槌会のメンバー=1月25日、岩手県紫波町日詰公民館

◎岩手・内陸避難者の選択(下)生活再建

<同郷者で集まる>
 笑いが湧く。テーブルには持ち寄った手作りの菓子。内陸への定住を決めた身の上話に花が咲く。
 岩手県大槌町で東日本大震災に遭い、内陸の同県紫波町に避難した同郷者でつくる「大槌会」。月1度、町の公民館に集まって近況を語り合う。
 「もう古里に戻れない状況を受け入れなきゃね」。代表の菊池鏡子さん(68)は津波で夫の正夫さん=当時(69)=を亡くし、次女が暮らす同町に避難した。
 福祉施設で介護支援員をしていた。避難当初は帰郷を考えたが、家族から「目の届く内陸にいてほしい」と反対された。2013年、紫波町に自宅を再建した。
 大槌会のメンバーは40〜80代の女性15人。ほとんどが紫波町で定住を決めた。被災した境遇を語り励まし合う。震災から間もなく5年。それぞれが明るさを取り戻した。
 菊池さんは大槌出身者に限らず、町内の避難者の所在を人づてに捜し続ける。「避難先に身寄りがいれば経済的にも精神的にも生活再建しやすい。誰にも頼れずに孤立したままの避難者がいないか心配になる」との理由からだ。
 昨年夏の県の調査によると、今後の生活の見通しが立たない内陸避難者は全体の約2割。支援団体はさまざまな課題に直面する避難者への対応を模索する。

<将来設計描けず>
 11年10月に発足した県内の支援団体でつくる「内陸避難者支援ネットワーク会議」は、避難者の支援方法をめぐり定期的な意見交換を重ねる。
 1月中旬に盛岡市であった会議には10団体が参加した。「高齢で年金管理がままならず貧困状態に陥った世帯がある」「将来の住まいの相談を受けても行政支援の先行きが不透明で助言に困る」。出席者から上がった苦悩の声だ。
 会議を主催するNPO法人いわて連携復興センター(北上市)の葛巻徹事務局長(38)は「時間の経過とともに避難者が抱える課題はもっと増えるはず。団体同士の連携を密にして解決策を探るほかない」と粘り強い対応を呼び掛ける。
 県は新年度、18年度入居開始を目指し、内陸災害公営住宅の整備を推進する。併せて「いわて内陸避難者支援センター」(仮称)を開設し、ハードとソフトの両輪で支援を強化する。
 受託事業者が将来設計のままならない避難世帯を戸別に訪問して相談に乗る。必要に応じて地域包括センターなど既存の支援窓口を紹介したり、生活保護の受給や福祉施設への入所を勧めたりする。
 県生活再建課の鈴木洋幸課長は「心のケアを担う生活支援相談員や民間団体の支援とはすみ分けし、住まいや生計維持で具体的な提案をする。全ての避難者が将来の見通しを持てるようにしたい」と説明する。


2016年03月04日金曜日


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