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<震災5年>住宅再建支援 移転先で格差

被災した宅地跡が点在する宮城県山元町の第3種災害危険区域。土地の買い取り対象から外れ、町外に転出した被災者には支援格差が生じている

 東日本大震災で自宅を失った被災者の住宅移転を支援する国の制度の適用をめぐり、宮城県内で地域による格差が生じている。被災市町から転出して再建した場合、建築費や土地購入費を支援しない自治体があるためだ。国は移転先を問わないが、人口流出を危惧する自治体の判断で制限を加えられる。被災者からは「同じ被災者なのに不公平だ」と不満が出ている。

 災害危険区域からの移転再建を支援する「がけ地近接等危険住宅移転事業」(がけ近)は転出先を限定していないが、実際の対応は運用する自治体次第。宮城県内では石巻市や亘理町などが転出者を補助対象に含めるのに対し、塩釜市や山元町は適用外としている。
 山元町では町内にとどまる被災者への支援は手厚い。町が3カ所に整備中の新市街地に自宅を再建する場合、がけ近による利子補給などに、建築・土地購入費に対する町の独自補助金が加わり、最大1212万円を受けられる。町内の別の地域に移転しても952万円まで支援がある。これに対し、町外転出では80万円までの移転費しかない。
 「震災前は同じ町民だったのに、差をつけられて悔しい」。山元町にあった自宅が津波で流され、仙台市に転居した無職の男性(79)は憤りを隠せない。
 2011年11月に新居を購入。子どもの援助を受け、足りない700万円分は親子ローンを組んだ。利子は自己負担。元の敷地は災害危険区域に指定されたが、町が津波浸水深に応じて独自に定めたうち最も浅い第3種区域で買い取り対象から外れた。
 「妻が体調を崩し、町の復興計画を待てなかった。私たちのように町外に出ざるを得なかった人も多いのに」と嘆く。
 支援格差について山元町震災復興企画課は「町外への人口流出を少しでも食い止めるため」と説明する。震災後、JR常磐線の長引く休止などの影響で転出が相次ぎ、15年国勢調査の速報値で人口は前回調査の10年比で4390人(26.28%)減った。
 人口流出の抑制に主眼を置く町の考えを、町議の一人は「人口流出の抑止効果はない。被災者の実情に考慮した公平な支援を議会で訴えたい」と問題視する。
 ただ、がけ近事業は事前申請が条件。既に再建した転出者に適用するには、町が国からの震災復興基金交付金を活用するか、一般財源を充てるしかない。町は「対象は数百世帯と見込まれ、大きな額になる。財政的に厳しい現状では難しい」と説明する。

[がけ地近接等危険住宅移転事業]東日本大震災を機に指定された災害危険区域や崩壊の恐れがあるがけ地など、自然災害で被災する可能性の高い土地から任意による住宅移転を支援する制度。危険な住宅の除去費補助に加え、移転先での住宅建築、土地購入の費用に関し最大708万円の利子補給が受けられる。


2016年03月05日土曜日


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