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<適少社会>新たな林業へ人材育成

アカマツの間伐に取り組む森林組合の若手職員と見守る加賀さん(右)。3人とも震災後に林業を志した=釜石市栗林町

◎人口減 復興のかたち[13]第3部なりわい創出(2)山こそ宝

 津波にのまれた市街地の背後に、険しい森が迫る。
 釜石地方森林組合がエリアとする釜石市と岩手県大槌町。林野面積は5万7000ヘクタールに及び、両市町の総面積の9割近い。海の三陸は「森のくに」でもある。
 2010年農林業センサスでは、岩手沿岸12市町村の林野率は88.3%と県の75.8%を上回る。宮城も石巻市以北の沿岸4市町は林野率65.1%で県の56.6%より高い。
 組合は3万8000ヘクタールを管理する。4割は人工林で、そのうち間伐できたのは10%。人手がない。枝葉は伸び放題。真っ暗な森は下草が生えず、保水力を失う。資産価値は減る一方だ。
 「林業は産業としての地位を失いつつある」。組合参事の高橋幸男さん(51)は危機感を募らす。荒れた森を宝の山によみがえらせたい。新たな林業を創造できる人材を育てよう。組合は昨年1月、林業スクールを始めた。
 基礎技術以外にも、ITやマーケティング、木質バイオマスの知識を学び、視野を広げる。世界的な金融機関バークレイズの支援金で3年間続ける。3期に分け1期は12人が受講した。

 東日本大震災は林業と組合の存続を揺るがした。津波で事務所が流され、役職員5人が犠牲となった。管内2市町の人口は15年国勢調査で4万8544。前回10年から1割強減った。
 人口減に歯止めを掛けられないか。被災者に地元産材の住宅を低コストで提供しよう。組合再建と並行して始めたプロジェクトは、そんな思いから。合板工場が被災し、行き場を失った丸太を活用した。
 新規採用にも積極的だ。震災後、9人を迎え入れた。「目に見える形で古里復興の力になりたい」。大槌町出身の加賀洋希さん(29)は県内の銀行を辞め、林業に飛び込んだ。スクールで山の奥深さを知った。
 人工林の管理面積が1割増えるごとに、10人の仕事が生まれるという。広大な森林の活用が雇用創出に直接つながる。林業の再生が地域の復興と重なる。高橋さんは確信する。

 埋もれていた資源は磨けば光る。東北は西日本に比べ天然林率が高い。大槌町で木工の「和RING−PROJECT」を展開する池ノ谷伸吾さん(45)は、天然広葉樹の豊かさに着目する。
 埼玉県出身。東京・歌舞伎町でクラブを経営していた。支援で通った大槌の自然に魅せられ、移住した。
 家主提供のがれきを材料にしたキーホルダー作りは一時、被災者70人以上の内職になった。現在は地場産材や津波の塩害木を活用して、家具や食器を作る。
 「サクラやナラ、ケヤキといった広葉樹は家具材、内装材として高値で取引される。今あるものの価値を見直せば、三陸の林業には可能性がある」。森を生かし、生かされる。池ノ谷さんは山に活路を見た。


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2016年03月05日土曜日


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