岩手のニュース

<適少社会>本音語り 外とつながる

産地ならではの食べ方、早採りワカメのしゃぶしゃぶを楽しむ「浜の学び舎」の参加者=大船渡市三陸町

◎人口減 復興のかたち[15]第3部なりわい創出(4)挑む漁村

 漁村は津波で一度消えた。担い手不足が加速する。このまま浜は衰えるのか。
 漁業センサスで、東日本大震災前の2008年と13年を比べると、岩手、宮城、福島3県の個人漁業経営体は9780から5469へ44.1%減少した。
 「変わるなら今しかない」。岩手県大船渡市三陸町綾里。人口2600の浜は震災復興を機に漁村の在り方を見直そうとのろしを上げる。
 漁師と消費者を直接つなげる。綾里漁協は15年9月、食材付きの情報誌「綾里漁協食べる通信」を創刊した。送料込みで2570円。第1号はワカメ300グラムを添えた。浜の歴史や生産現場のルポ、地元の調理方法など読み応え十分だ。
 「漁師は寡黙で情報発信にも消極的。後継者がいないのは、課題も魅力も伝わらないからではないか」。編集長の漁協職員佐々木伸一さん(42)はカメラ片手に綾里を駆け回る。「こわもての漁師は、実は底抜けに明るい」と言う。

 思いの丈を本音で語る。「ワカメをつくるだけで、売る努力をしなかった」「どこで誰が食べるか知ろうとしなかった」。漁家の反省を率直に書く。
 浜の子の海離れの現実も伝える。「自由な遊び場だった海に震災後は子どもだけで行けなくなった」「魚を食べられない子が増えている」。後継者難の問題を消費者とも考えたい。
 年4回発行する。1号は目標の3倍を超える166人が購読した。アワビ付きの2号は215人に増えた。通信をきっかけに綾里を訪れる人が出てきた。
 佐々木さんの目は漁村の閉鎖性にも向く。
 「半世紀以上前からの決まりで、外部の人が組合員になるのは難しい。今は人が減り、漁場も余っている。時代の変化に対応しなければ生き残れない」。浜で働く人の外からの受け入れは今後の大きなテーマだ。

 浜を外に開く取り組みは他にもある。産直ホタテで知られる綾里の小石浜地区。支援グループの手で昨年夏、「恋し浜ホタテデッキ」が完成した。ログハウスの交流施設で20人ほどが集える。
 「被災地としてではなく、綾里本来の姿を知ってほしい」。支援活動をきっかけに移住したダイビングインストラクターの佐藤寛志さん(41)が運営する。
 デッキで月1回、「浜の学び舎(や)」を開く。地元漁師が参加者に生産現場の思いを伝える。講義の後はバーベキュー。おいしい調理実習が始まる。食べる人の笑顔が浜の力になる。
 講師役の佐々木淳さん(45)は「壊滅したホタテの復活まで何年も待つ、と顧客に言ってもらえた。元に戻す励みになった」と振り返る。
 逆境の中で気付いた外と直接交わる重要性。新たな漁村をつくる。綾里の挑戦は始まった。


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2016年03月07日月曜日


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