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被災者へ希望語れる献杯酒に

出来上がった献杯酒を前に語り合う(左から)熊谷さん、川崎さん、鈴木さん

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から5年を前に、福島県浪江町から山形県長井市に拠点を移した鈴木酒造店長井蔵の専務鈴木大介さん(42)と、蔵人経験があり山形市で酒販店を営む熊谷太郎さん(46)が献杯のための日本酒を造った。酌み交わしながら犠牲者、被災者に思いをはせ、明日への希望を語り合ってほしいとの思いを込めた。
 福島市産の酒米「夢の香」を使った純米吟醸で、甘味と酸味のバランスの良い酒に仕上げた。
 鈴木さんの浪江町の自宅と酒蔵は津波で全壊し、原発事故で避難を余儀なくされた。熊谷さんは宮城県気仙沼市出身で、酒販店を営んでいた実家は津波で全壊した。
 2人は鈴木酒造店の常連だった川崎力さん(44)=新潟県村上市=から「5年目には黙とうから献杯に変えてもいい時期ではないか」と勧められた。「早過ぎるのでは」との迷いは「被災地出身の自分たちだからこそ造れる」と考え直したという。川崎さんは趣旨に賛同する飲食店や酒販店探しを手伝った。
 商品名は「ゴールデンスランバ」。太平洋側の漁村で信仰される「安波様(あんばさま)」と、ビートルズの「ゴールデンスランバー」にちなむ。浪江町には安波祭り、気仙沼市には安波山があり、故郷への思いを歌う曲が重なった。
 鈴木さんは震災直後、消防団員として避難を呼び掛け、自身も間一髪で津波から逃れた。翌日に原発事故のために退避せざるを得なかったが「捜索していれば、助かる命があったかもしれない」といまも悔やむ。
 再起を支えてくれた多くの人々への感謝に加え「被災した酒蔵から、少しでも前向きな気持ちを伝えたい」と心を込めて仕込んだ。
 熊谷さんは「全国の皆さんに、この酒を通して震災と被災地に関心を持ってもらいたい」と期待する。
 ゴールデンスランバは11日から全国約90店の飲食店で提供されるほか、福島県や山形県の酒販店で取り扱う。1本(1.8リットル)3240円で約700本販売する。連絡先は鈴木酒造店0238(88)2224。


2016年03月07日月曜日

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