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<適少社会>ジャズと起業復興の力

 アリソン・プライヤー 各種統計を基にニューオーリンズの復興を探るNPO代表。過去10年間に発表した指標は、市や地元団体にコミュニティー再生のツールとして重用されている。シカゴ出身、54歳。

 東日本大震災で被災地のなりわいは大きな打撃を受けた。人口減は一気に加速した。担い手不足と市場規模の縮小が、既存経営者の心を冷やす中、地域産業を再生し発展させるには、固定概念に縛られない新たな戦略が必要だ。被災地に生まれつつある起業の波を大きくしようと「ローカル・イノベーターズ・フォーラム2016」(ジャパン・ソサエティー、NPO法人エティック主催)が2月27日、東京で開かれた。最前線で地域資源の活用に挑むリーダーの意見を紹介する。

◎ニューオーリンズの教訓/ザ・データ・センター代表兼主席人口統計学者アリソン・プライヤーさん

 10年前のハリケーン「カトリーナ」で壊滅的被害を受けたニューオーリンズは「起業家のまち」として復興してきた。
 かつてニューオーリンズの経済は石油、ガス、港湾、観光が支えていた。市当局は産業の多様化でまちのルネサンス(再生)を果たそうと、ハイテクやIT関連企業の誘致を進めた。規制緩和を進め、人材と資金の集積と循環を目指した。
 その結果、起業件数は全米平均より60%以上も多く、他の成長傾向にある大都市圏と比べても40%も上回った(2012年)。
 新たなまちづくりに、起業家精神はとても大切だ。「ジャズの聖地」として知られているニューオーリンズに魅力を感じた若者が全米から集まってきた。家賃は他の大都市より安く、移住に適していた。
 インフラ投資も復興のエンジンとなった。洪水対策としてオランダのポンプ排水技術が導入され、新たなビジネスとなった。
 現在、産業の多様化と起業家ブームの恩恵を受けているが、経済的格差を縮小させる対策は各都市と比べても遅れている。
 富裕層を構成している白人世帯のうち、所得の最上位層が25%(99年)から30%(13年)に伸びた。一方で貧困層の多い黒人世帯は、所得の最下位層が42%から44%に増えた。
 経済繁栄の恩恵はもっと広く住民に浸透させなければならない。そこに成功すれば全世界への模範になる。
 大災害からの復興には、新しい人材を迎えつつ、地域の課題に対して解決力を持つコミュニティーを築くことが大切だ。
 ニューオーリンズのジャズと同様に、伝統文化や祭りも住民と地域の結びつきを強める重要な役割を担う。東北では宮城県女川町を訪ねたことがある。東北のとても美しい自然を生かした復興を果たしてほしい。

[カトリーナ]2005年8月29日に米南部に上陸した超巨大ハリケーン。堤防が決壊して大洪水となり、避難民約200万人、死者約1300人を出す米史上最大級の自然災害となった。米政府は復興に1140億ドル(約13兆円)の大型予算を組んだ。


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2016年03月07日月曜日

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