宮城のニュース

<検証変貌するまち>整う施設 需要不透明

複合ビル、災害公営住宅といった復興事業が本格化する石巻市中心部

◎震災5年(下)中心部の懸念

 東日本大震災の津波で被災した宮城県石巻市の中心市街地にことし、再生を期す建物が相次いで完成する。
 JR石巻駅から旧北上川西岸までの一帯で、復興事業として地権者が共同で取り組む複合ビル四つの開発が進む。住居や商業、福祉施設などが入り、一部は利用を始めた。ビルへの入居分を合わせて5カ所に災害公営住宅が整備され、さらに市立病院が建つ。
 地権者の一人で複合ビル1棟を運営するまちづくり会社代表社員の阿部紀代子さん(54)は「石巻の顔として活気を取り戻したい」と意気込む。

<郊外流出続く>
 震災前から、市のにぎわいの中心は大型商業施設が立ち並ぶ郊外の蛇田地区に移りつつあった。津波被害がなかったことで、被災者や事業所の流入に拍車を掛けた。復興土地区画整理事業で新蛇田地区に大規模団地の整備が進むにつれ、勢いを増している。
 中心市街地は一層深刻な空洞化に直面する。震災前より人口は約1割、事業所数は約6割減少。空き地などの面積は約3割増加した。
 市はハード事業を核に中心部でコンパクトなまちづくりを進め、定住者や交流人口を増やす考え。人口は震災後の2013年度より4割増を見込む。17年には民間出資の新会社が地場の海産物などを扱う生鮮マーケットを設け、年100万人の利用者を目指す。
 復興まちづくりについて、阪神大震災の被災地神戸市では、行政による過大な再開発事業で生じた負担金が、今も商業者に重くのしかかる。石巻の地権者らは神戸の課題を教訓にビルの容積を抑えたり、より小規模な復興事業を選んだりして身の丈に合う形を探ってきた。
 ただ、新たな商業施設がどれだけの需要を呼び起こせるか不透明だ。中心部では商店主らの再建方法をめぐる考えの違いから再開発計画が相次いで頓挫。合意の難しさという課題も浮き彫りになり、市街地再生へのハードルは高い。

<付加価値必要>
 復興事業をきっかけに知恵を絞る商店街も現れた。
 石巻駅から約500メートル南東の中央一大通り会。復興土地区画整理事業で道路が広がり、周辺に災害公営住宅が建設される。
 公営住宅の壁面をギャラリーのように見せたり、通りに共通の手作り家具を置いたりすることを考える。
 会長で豆腐店を営む林光次郎さん(60)は石巻駅を通学で利用する高校生らが商店街を通らなくなった現状を嘆く。「新しい住民や高校生らと一緒に街を『使う』ことで、まずは通りを歩いてもらえるようにしたい」と話す。
 中心市街地の空洞化は全国の地方都市が抱える共通の課題だ。震災で一気に加速した石巻市の姿は各地の将来を先取りしている。
 地元まちづくり団体「街づくりまんぼう」の苅谷智大さん(30)は「大量集客によるにぎわいではなく、サービスの付加価値を高めるなど来る人が豊かな時間を過ごせるような工夫が必要だ」と指摘。「震災後に活動する若者の定住支援など、中心部を残すなら市がもっとリーダーシップを発揮すべきだ」と言う。(坂井直人)


2016年03月08日火曜日


先頭に戻る